Research Abstract |
平成23年度の研究においては,方言オノマトペを全国的に把握するに十分な基盤資料となる「日本語方言オノマトペ・データベース」の構築に,前年度に引き続き取り組みつつ,数地点での記述調査を試みた。 このデータベースは,全国各地の方言集・方言辞典・地誌など計410冊における約7700語の方言オノマトペの語形・都道府県・見出し語形・意味・用例などの情報を大まかに見渡せるものである。方言オノマトペがさまざまな名詞・動詞・形容詞などを派生させることから,単純なオノマトペではない語も検討対象に加え,語彙体系全体を見渡す必要がある。そこで,平成23年度は,特定地点として鹿児島県喜界町,岩手県盛岡市,群馬県西部地方について,代表的な方言集の全体を入力し,語形と意味用法の両面から,語彙体系全体におけるオノマトペの位置づけを試みた。その際には,実際に面接調査で使用する調査票を作成した。具体的には,方言文献資料に基づいて喜界町方言のオノマトペ・リストを作成し,それらを参照しながら実際の調査を行うことにより,方言におけるオノマトペの研究方法を模索し,報告した。その結果,オノマトペの繰り返し語形を短縮化した語形の語末を長音にしたものが名詞として用いられること(例:アドゥナアドゥナ(のろのろ)/アドゥナー(のろま))について指摘し,「猫」のグルーも同様に,オノマトペの繰り返し語形を最短の語形に短縮化し,語末を長音にすることで,「グルグルとのどを鳴らす動物」というような意味から成立したものであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方言オノマトペにおいてはデータベースが存在せず研究の基盤がないに等しい状態であったが,新たなデータベースが構築されつつあることと,語彙体系全体におけるオノマトペの位置づけを明らかにするための方法が整いつつあること
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Strategy for Future Research Activity |
当初,方言オノマトペのみを抽出して入力し,分析することを考えていたが,実際の分析において,オノマトペ以外の語も分析対象にすべきであることが明らかになった。そのため,資料の一部のみを入力するのではなく,全体を入力することとしが。現在は,それらのデータから,オノマトペとそれに関わる語の関係を把握しつつある。
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