2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520486
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
三好 暢博 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30344633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 陽一 大阪大学, 言語文化研究科, 准教授 (50301271)
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Keywords | 反一致 / 素性継承 / フェイズ / 極小主義 / CP-expletives / EPP |
Research Abstract |
本研究の目的は、反一致現象の分析を提示し、その理論的意義を明らかにすることで言語理論の深化に寄与することにある。23年度は、規範的一致が出現しない統語環境を明示し、その理論的含意を探求した。より具体的には、素性継承が完全な形で行われない現象(部分継承)が反一致現象の背後にあるメカニズムであるという仮説を検証し、スカンジナビア諸語・ゲルマン諸語に観察される虚辞(CP-expletive)に文頭制約が課されること及び英語のwager/allegeタイプの特殊なECM構文等には、反一致現象に必要とされる部分継承が関係していることを示し、当該の現象群の統一的分析を提案した(Miyoshi and Tozawa(2011))。すなわち、この特殊な虚辞(CP-expletive)の分布には、以下2つの特性がある。(1)補文内での定動詞第2位現象の可否と虚辞(CR-expletive)の分布には相関がある。(2)補文内のCP-expletiveには障壁形成能力がなく、話題島の効果を示す補文中の倒置V2語順とこの点で異なる。これらの特性から、EPP素性を単独で認可する要素は、当該のedge位置には残留できないという条件が働くことを明らかにした。この条件により、アイスランド語の文体前置(stylistic inversion)やwager/allegeタイプの特殊なECM構文の諸特性が導かれることを示した。ハンガリー語・オランダ語の"N of a NP"構文で観察される不規則な数一致(Number Agreement)は、これらの言語の名詞句内部の階層性の複雑さが干渉要因となって、明確な結論を導くことはできなかった。さらに、軽名詞句(nP)のみでは記述自体が困難であるため、カートグラフィー的な分析手法をとる必要があることわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
素性継承が完全な形で行われない現象(部分継承)が反一致現象の背後にあるメカニズムであるという主張の経験的な妥当性が、独立した現象により検証された。さらに、EPP素性を単独で認可する要素は、当該のedge位置には残留できないという条件の発見等を論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度までの成果に基づき、閉じた統語領域における言語計算に対する、反一致現象の理論的意義を明らかにし、研究のまとめを行う。部分継承が反―致現象の背後にあるメカニズムであるという主張の妥当性の検証を続けるとともに、edge素性に関する理論的含意を明らかにしていく。この作業を通じて、言語理論内部での本研究の位置づけを明らかにしていく。
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