2011 Fiscal Year Annual Research Report
句構造の非対称性・線形化と構造的依存関係に関する理論的・実証的研究
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22520487
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 宣美 弘前大学, 人文学部, 教授 (90195371)
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Keywords | 非対称性 / 線形化 / 等位構造 / 右方移動 / 多重支配 / 削除 / 右枝節点繰上げ / 空所化 |
Research Abstract |
本研究の目的: 右枝節点繰上げ(RNR)等の等位構造が関わる右方移動現象の理論的・実証的研究に基づき、句構造の非対称性・線形化と構造的依存関係のメカニズムを解明する。 本研究の具体的内容及び意義・重要性: 1)RNR構文には全域的RNR構文と対称的RNR構文が存在し、一致効果が観察されるかどうかという観点で、3種類のRNR構文が存在することを明らかにした。(1)a.全域的RNR構文(RNR構文のin-situ削除分析):一致効果が見られる場合 I'm interested in_but rather apprehensive about their new proposal. b. 全域的RNR構文(RNR構文のin-situ削除分析):一致効果が見られない場合 Bill has toread two,and Mary must write one essay by tomorrow. c. 対称的RNR構文(RNR構文のex-situ多重支配分析)I borrowed_,and my sisters stole,a total of $3000 from the bank. 2)RNR構文に課される右端制約(RER)を満たすために重名詞句転移が適用されると仮定することで、Ince(2009)の分析とは異なり、トルコ語等のRNR構文の適格性に説明が与えられることを指摘した。 3)一致効果の欠如(動詞形態、数詞と名詞の数の一致、範疇のミスマッチ、否定極性表現、再帰代名詞の先行詞)の現象に基づき、全域的RNR構文のRNR要素が一番右側の等位項とのみ一致効果を示す場合があり、Citko(2011)のParallel Mergeに基づく多重支配分析には不備があり、全域的RNR構文の削除分析の方が優れていることを指摘した。 4)日本語の逆行等位構造縮約構文は、空所化ではなくRNRで導かれる構文であることを明らかにし、英語と同様に、削除規則が適用されて導かれる構文であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
句構造の非対称性・線形化と構造的依存関係に関する先行研究を批判的に検証し、2種類の線形化のメカニズムを峻別する必要があることを明らかにした。この研究成果は、日本中部言語学会定例研究会において研究発表し、学会誌Ars Linguisticaに論文として掲載された。このことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本研究課題の研究を着実に推進するために、研究資料(句構造の非対称性・線形化と構造的依存関係に関わる言語学書、等位構造及び等位構造以外の右方移動に関わる言語学書、言語学関連雑誌、言語学会機関誌、博士論文等)を購入し、等位構造以外で観察される右方移動現象を総合的・包括的に調査・分析する。 2)全国的・国際的な学会・研究会に参加し最先端の研究動向を調査する、言語研究に従事する研究者と本研究課題に関して意見交換する、さらに、本研究課題で得られた研究成果を還元するため、全国的・国際的な学会・研究会で研究成果を発表する等、研究の目的を達成することができるように、研究を行う。
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