2011 Fiscal Year Annual Research Report
省略現象に関する統語論・意味論のインターフェース研究
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22520488
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島 越郎 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (50302063)
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Keywords | 動詞句削除 / 空所化 / 擬似空所化 / フェイズ理論 / 削除 / コピー / 左方転位文 / CP分離仮説 |
Research Abstract |
省略文とその先行詞文との構造的関係を明らかにすることを研究の目的とし、省略を認可する統語条件と意味条件の相互作用について考察した。具体的には、英語における次の三つの省略文が示す諸特性を解明することを試みた。 (1)a.john loves Maly, and Tom does too. b.John loves Mary, and Tom Jane. c.John loves Mary, but he does not Jane. 文(1a)は助動詞doesの後で動詞句love Maryが省略されている動詞句省略(VP-ellipsis)の例。また、(1b)は主語Tomと目的語Janeの間に時制を伴う動詞lovesが省略されている空所化(Gapping)の例。そして、(1c)は助動詞doesの後で原形動詞が省略されている擬似空所化(Pseudogapping)の例である。申請者は、これまでの研究において、Chomsky(2001)が提案するフェイズ理論の枠組みにおいて、動詞句省略を音声解釈部門における削除操作により、また、空所化と擬似空所化を意味解釈部門におけるコピー操作により派生させる分析を提案している。 本年度は、この分析の経験的妥当性を(1)の省略文が示す(2)の諸特徴の観点から検証した。 (2)a.動詞句削除文は不定詞節内に生起できるが、擬似空所化文は生起できない。 b.動詞句削除文の先行詞は一つの構成素を形成しない複数の分離先行詞になり得るが、擬似空所化文と空所化文は分離先行詞を許さない。 c.空所化文の主語は先行詞文中の主語に束縛されるが、擬似空所化文の主語は束縛されない。 (L動詞句削除文と擬似空所化文では先行詞文中の否定極性表現を肯定極性表現として解釈できるが、空所化では解釈できない。 また、Rizzi(1997)が提案するCP分離仮説の枠組みを仮定し、空所化文と左方転位文(Your book_1, you should give it_1 to Paul.)が共に、i)従属節内に生起できない、ii)島の制約効果(island effects)を示さないという同じ特徴を持つ事実を説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を進めている段階で、予期しない新たな問題も幾つか生じ、当初の計画以上には進展しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、省略文とその先行詞文に課せられる同一性条件を明らかにすることにより、省略を認可する統語条件と意味条件の相互作用について更に考察する。
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Research Products
(3 results)