2012 Fiscal Year Annual Research Report
再帰代名詞の文法化現象を基に照応理論を構築する研究
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22520493
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野口 徹 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (20272685)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 英語学 / 言語学 / 文法理論 / 照応 / 文法化 / 再帰代名詞 |
Research Abstract |
文法化現象に関する研究は、機能主義類型論の立場から行われることが多い。本研究の中心的な課題は、主に英語と日本語の再帰代名詞の文法化現象に生成文法理論の視点を導入することにより、文法化現象の背後にある仕組みを明らかにし、妥当な照応理論を構築することにある。 平成24年度は本研究の3年目にあたり、研究初年度及び2年度における現代英語、古英語・中英語、および日本語に見られる再帰形式の統語的・形態的・意味的性質に関するデータの整理と理論的課題の整理を踏まえ、近年提案されている照応理論の枠組みと本研究との関係について理解を深めた。とりわけ、Reuland (2011)の提案するモジュール化された照応理論とReinhart and Siloni (2005)の再帰化に関する語彙・統語パラメーターの提案を参考に、日本語の「自」を接頭辞とする動詞の派生の仕組みについて検討した。具体的には、(1) Kishida and Sato (2012)の提案を批判的に検討し、同構文は語彙的に派生されるものと統語的に派生されるものとに区別すべきであるとの結論を得た。(2)類似構文として、「自己」を接頭辞とする動詞が生じる構文や「自身」が生じる構文があり、これらの構文が統語的派生を受けるのと性質が異なることを明らかにした。(3)これらの結果を論文として公表した。 ただし、「自分」などの代表的な日本語の再帰表現との比較検討については、未だ十分になされているとは言えず、この点を個別言語および照応理論一般の視点から検討することが、平成25年度の研究課題となることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、「自分」を含めた日本語の再帰形式全般について、考察を進める予定であったが、「自」、「自己」、「自身」の比較検討に留まった。また、照応理論全般についても、十分な検討が済んでいるとは言えない。個別言語の再帰形式が持つ性質と一般言語理論との整合性に関する十分な考察を更に行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、個別言語の再帰形式が持つ統語的・意味的性質に関する記述的研究を行うと同時に一般照応理論の目指すべき枠組みについても考察を進める。具体的には、以下の段階に沿って考察を進める。 (1)「自分」について記述的・理論的な視点からなされた数多くの先行研究から代表的なものを選び、統語的・意味的性質を確認し、データベースを作成する。 (2) Rooryck and Wyngaerd (2011)などの近年刊行された研究を取り上げ、Reuland (2011)などとの比較検討を行い、より望ましい照応理論の方向付けを行うなどの理論的考察を行う。 (3) (1)と(2)で得られた結果を基に、「自」、「自己」、「自身」などの再帰形式との比較検討を行い、日本語の再帰形式の全体像を明らかにする。
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Research Products
(1 results)