2013 Fiscal Year Annual Research Report
再帰代名詞の文法化現象を基に照応理論を構築する研究
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22520493
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野口 徹 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (20272685)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 英語学 / 言語学 / 文法理論 / 照応 / 文法化 / 再帰代名詞 |
Research Abstract |
文法化現象に関する研究は、機能主義類型論の立場から行われることが多い。本研究の中心的な課題は、主に英語と日本語の再帰代名詞の文法化現象に生成文法理論の視点を導入することにより、文法化現象の背後にある仕組みを明らかにし、妥当な照応理論を構築することにある。 平成25年度は本研究の4年目にあたり、本研究3年目までの現代英語、古英語・中英語、および日本語に見られる再帰形式の統語的・形態的・意味的性質に関するデータの整理と理論的課題の整理を踏まえた上で、 (1) 本研究3年目までに得られた研究成果について、軽動詞構文一般に見られる性質に基づき、更に詳細な検討を加えた。その結果、「自」、「自己」、「自身」という再帰形式が文法の異なるレベルにおいて派生を受けるという仮説に至った。(2) 日本語の中古・中世の文献に基づき、再帰形式の発展について調査し、データベースを作成し、(1)で得られた成果との関連について調査した。(3) (1)と(2)で得られた研究成果について、研究会と国際学会で研究発表を行い、研究者との意見交換を行った。(4) 研究成果の一部を論文として公表した。 ただし、日本語の再帰形式の成立については、未だ不明な点が多く残っている。また、語彙の阻止という現象との関連など、照応理論と一般文法理論との関連付けについても考察を進める必要があり、この点を平成26年度の研究課題とすることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、「自」、「自己」、「自身」の文法的性質について、「自分」のような代表的な再帰形式と比較を行うことより明らかにすることとしていたが、歴史的な成立過程を検証する必要があるという認識に至ったため、研究の方向性を途中で修正した。また、個別言語の照応体系と一般文法理論との整合性に関する考察も十分に行われておらず、研究課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、日本語の再帰形式の成立過程を明らかにするとともに、日本語の照応体系が示す性質を一般文法理論の観点から調査を行う。具体的には、以下の段階に沿って考察を進める。 (1) 日本語の古代から近世に至るまでの文献をいくつか選び、再帰形式の歴史的発展を調査し、データベースを構築する。 (2) 近年刊行された一般文法理論に関する文献を取り上げ、照応理論との関連について調査する。 (3) (1)と(2)で得られた知見を基に、日本語の再帰形式が示す特徴を捉えうる一般照応理論の構築を目指す。
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Research Products
(3 results)