2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520497
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (00263179)
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Keywords | 懸垂分詞 / 主体化 / コーパス / アドラー心理学 / 構文文法 / ナラティブ / 言語変化 |
Research Abstract |
今年度は懸垂分詞表現を基とする派生前置詞や接続的用法について、コーパスを利用したパイロット調査を行った。懸垂分詞構文の意味が持つ主観性という特質が、文法化という歴史変化過程においても影響を及ぼすことを示唆するデータを得た。また、発話者の意味の読み込みを伴う「主観性」、およびそこから派生するとされる聴者への語用論的相互作用である「間主観性」と絡めた考察を始めた。 2つの事態の客観的な時間的前後関係や因果関係が見いだせない事態の場合に、1方がメタ的・概念的に再解釈されるのが、意味変化の発端である傾向が見えてきた。懸垂分詞consideringの但し書き的な話者のコメント用法(「~を考えると」)、更にはそれが文尾に単独で起こることで「そこそこ、まぁまぁ」という副詞的な機能を帯びる、主観性に関わる現象と、仮想的移動からテキスト指示的になるMoving on (to the next point)やGoing (back to your previous question)などが、聞き手を意識した間主観性を帯びるようになること、等、COHAコーパス等を用いて調査を行った。 また、懸垂分詞表現の意味研究から、構文理論一般に提言できる点について、日本英文学会関西支部大会にてシンポジウム企画、司会、発表を行った。懸垂分詞を構文と捉える中で、項構造を中心としたGoldberg的な考え方では扱いきれない要素があることを指摘し、構文の意味の中にも話者の視点や感情などの社会言語学的情報、ナラティブ面から見た特質などの情報も必要となる可能性を主張した。 更に、主観的認知論の立場をとる心理学派の代表として、カウンセリング等の分野で地道な流れを汲むアドラー心理学の基礎理論を学び調査し、言語における主観性概念に対して、心理学面からの基礎付けを試みつつある。
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Research Products
(1 results)