2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520497
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (00263179)
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Keywords | 懸垂分詞 / 内と外の視点 / 主観性 / 間主観性 / コーパス / 対人関係機能 |
Research Abstract |
本年度は、懸垂分詞構文の意味を元にした言語変化がどのように主観性と関わるかを考察した。2つの事態の客観的な時間的前後関係や因果関係が見いだせない事態の場合に、懸垂分詞句がメタ的に使われるようになることで、意味変化が起こる事例をいくつか取り上げて考察した。懸垂分詞consideringの但し書き的な話者のコメント用法(「~を考えると」)、更にはそれが文尾に単独で起こることで「そこそこ、まぁまぁ」という副詞的な機能を帯びる、主観性に関わる現象と、仮想的移動からテキスト指示的になるMovingon (to the next point)やGoing (back to your previous question)などが、聞き手を意識した間主観性を帯びるようになること、等、COHAコーパス等を用いて調査を行った。この成果については、日本英文学会全国大会のシンポジウム(北九州市立大学)、国際認知言語学会(中国・西安外国語大学)、国際歴史言語学会(大阪・民族学博物館)で発表し、その内容を部分的に論文化し、英語論文を投稿中である。また、この懸垂分詞の意味変化から認知文法的な主観性理論について提言できることについては3月の言語と間主観性フォーラムin仙台(東北大学)にて発表を行った。その際の主張点としては、認知文法にも対人関係的な側面を積極的に取り込む必要があること、また通時的なデータに合致するような概念であるかどうかに理論的根拠が欠けてしまうこと、などが挙げられる。 また、日本語における「考えてみると」「とすると」「となると」など、英語懸垂分詞構文と同じような性質をみせる用法についても考察を進めている。いずれの例においても、話者が事態内部に存在して関係者の立場から描写するような「主体性」を見せる構文から、聞き手を意識した「主観性」を見せる懸垂分詞句の発達へ、という、同じ流れが観察できることが明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当面の目標であった歴史変化研究についての調査もある程度の成果を上げており、また多言語研究の第一歩としての日英対照も実現できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は対照研究の対象言語をもう少し増やし、同様の結果が得られるかどうか調査を進める計画である。また、対人関係的側面の重要性が明らかになってきたので、談話分析や語用論研究との接点も求めていきたい。余力があればそれ以外の付帯状況構文についても考察を始めたい。
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Research Products
(7 results)