2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520497
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00263179)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 主観性・主体性 / 事態把握 / 意味変化 / 構文化 / 間主観性 |
Research Abstract |
英語の懸垂分詞構文由来の表現として、懸垂分詞単独での用法に着目し、文末でのconsideringと文頭でのMoving onを取り上げ、それぞれの生起パターンと意味の変遷について考察した。もともとの懸垂分詞構文の意味を踏まえて、新しく対人関係的、間主観的な側面を増していること、懸垂分詞(句)単独での新たな構文化現象が談話ジャンルで見られること、を明らかにした。また、間主観性と生起位置の問題として、「文の右側には主観性、文の左側には間主観性という仮説」が近年見られるが、considering/moving onはこの仮説に対する反例となること、意味変化は位置だけでは語れず、もともと持っている語彙的意味のもつ役割を軽視できないことなどの問題提起を行った。この内容は2012年8月に国際構文論学会(韓国・ソウル)および2012年12月の福岡言語学会にて発表し、英語論文として投稿、現在審査中である。 また、日本語での対応表現として「考えてみると・みれば・みたら」についても考察を行い、懸垂分詞構文相当の「発見の『と』」やそれに類した表現由来の表現として、似たような現象が見られることを議論した。具体的には、新しい接続表現として、次にどんな内容が導かれるかを予測するマーカーとしての機能を確立していることが明らかになった。この内容については10月に開かれた公開ワークショップ<構文の意味をめぐって―日本語研究と構文理論の接点> にて発表した。 ただし日本語では対人関係的な間主観性よりも認識的主観性のレベルでの意味が主であること、その差は事態把握レベルと対人関係レベルの言語への組み込み方が日英で異なるとする池上(2003/2004)や廣瀬(2012)に求められる可能性があることを検討している。この内容の一部は2013年1月の和光大学での講演および2013年3月の岡山大学での講演にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
懸垂分詞構文の意味が主体的な事態把握であることはすでに明らかにしていたが、それを近年主観性・主体性研究の中に位置づけ、「身体性」の関与度合いの高い構文であるという再規定ができる見込みとなった。 また、構文の意味から派生して、その一部表現が新たに「構文化」していくプロセスについて、日本語と英語両方のデータを比較対照することができている。特に、類似性だけではなく、その違いの背後にある「日英での言語構造と事態把握の組み合わせパターンの異なり」へとつなげる展望を持つことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は日英にとどまらず他の言語(特に現時点で共同研究の可能性が高いフランス語)との比較を試みる予定である。 さらに、談話ジャンルでの特異性について、もう少し詳細に調査を行い、間主観性という場面で現れる特徴について明らかにする予定である。 本研究の成果はできれば「構文と(間)主観性と意味変化」をテーマにした著作としてまとめたいと考えており、その方向で進めていきたい。
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Research Products
(7 results)