2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22520507
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
時崎 久夫 札幌大学, 外国語学部, 教授 (20211394)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強勢 / 語順 / 相関 / 比較 / 非対称性 |
Research Abstract |
1.語強勢の位置と主要部と補部の語順が相関して歴史的に変化することを、世界の言語から例を挙げて示した。この事実を、統語構造から音韻構造への写像が左枝分かれ構造と右枝分かれ構造で非対称性であることから、理論的に説明した。さらに、強勢位置の変化がない言語でも、母音の長短の区別が消失することが語順変化を引き起こす可能性があることを示した。 2.北方言語と南方言語を比較して、語強勢の位置と主要部と補部の語順、さらに音節構造が相関するかどうかを考察した。 3.比較表現で、英語の -er と more に対応する形のうち、どちらを用いるか、また両方を用いるかを、多くの言語について調査し、語強勢の位置と相関があることを見つけた。この相関についても、統語構造から音韻構造への写像が左枝分かれ構造と右枝分かれ構造で非対称性であることから、理論的に説明した。 4.音調言語であるとされる中国語の語順について、動詞句など多くの句が動詞-目的語などの主要部-補部の語順であるが、完了相-動詞句や節-疑問詞などは補部-主要部であることについて、理論的に考察した。第3声の変調が動詞句などの音調句内の右端で起こらないことから、音の強い位置は右端であること、また完了相と疑問詞が声調を持たずに接辞として左の語に付くことから、これらは弱い位置であることを論じた。この音声的な強さの位置が、語強勢の位置と同様に、語順を決めていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの分析は、統計処理をいったん終わらせている。しかし、強勢位置を再分類することにより、新たな発見の可能性が残っていると思われる。 理論的な説明については、大筋は完成しているが、強勢位置と韻脚の関係について、さらに研究する必要がある。 地域的には、アフリカやオセアニアなどの言語の強勢位置についての資料が少ないため、これらの言語についての分析にまだ時間がかかる。 研究をまとめ、論文あるいは研究書として公刊するように努めており、一部は出版されつつあるものの、まだ途中の段階であるものが多い。
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Strategy for Future Research Activity |
データの分析は、強勢位置を再分類することにより、統計処理を改めて行い、仮説の検証を精密化する。 理論的な説明として、強勢位置と韻脚の関係について、音韻論のこれまでの理論と照らし合わせながら、分析の基盤を確立させていく。 アフリカやオセアニアなどの言語の強勢位置について、新たな資料を論文やデータベースから収集し、可能な限り充実させる。 研究成果を論文あるいは研究書として公刊するため、まず国内および海外の学会で発表し、コメントをもとに改訂しながら、完成を目指す。
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