2011 Fiscal Year Annual Research Report
英語における統語構造の適応的変化ー機能範疇の発達を中心にー
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22520509
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
保坂 道雄 日本大学, 文理学部, 教授 (10229164)
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Keywords | 英語史 / 統語変化 / 言語進化 / 機能範疇 / 二重目的語構文 / 格 |
Research Abstract |
本研究の目的は、英語の統語変化(主に機能範疇IP及びCPの発達)に関して、生成文法、認知言語学、進化言語学の知見に基づき、その要因と過程を説明しようとするものである。今年度の研究においては、その目的を達成するため、以下の研究を行った。 1.古英語・中英語と現代英語のパラレル・コーパスの作成 昨年度収集した資料を基に、古英語・中英語と現代英語を容易に比較できるようにPDF化し、The『York-Toronto-Helsinki Corpus of Old English ProseやThe Penn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English等の文法標識付コーパスを有効に利用できる環境を整えた。 2.通時的個別研究 2.1 動的機能投射構造 本研究の大きな枠組となる動的機能投射構造に関する仮説をまとめ、4月の英語学会の国際シンポジウムにて発表を行った。また、11月出版された『日本語学』に「格」の機能投射構造を中心に、論考をまとめ、発表した。 2.2 二重目的語構文 本年度の具体的テーマの1つとして、二重目的語構文の発達を通時的に考察し、英語の機能投射構造の変化が英語特有の構文現象を引き起こしていることを、ドイツ語、フランス語、日本語等との比較も交えて、論証した。また、その成果は、8月の津田塾大学でのシンポジウムにて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的にそり、英語の機能投射構造の発達について、具体的な文法現象や構文現象を通して、実証的な研究を順調に進めている。また、その際、英語の通時的言語コーパスを利用しているが、単なる統計的処理に留まらないよう、自作の古英語・中英語と現代英語訳のパラレル・コーパスも利用し、幅広い文脈での意味判断を行っている。ただし、まだコーパスの量が十分ではなく、今後資料を増やし、拡張する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度が、本課題研究の最終年度となるため、これまでの研究をまとめ、英語の機能範疇構造を、通時的及び共時的視点から、論じる予定である。また、その際、個別の文法・構文現象もその対象を増やす予定である。現在取り組んでいるものとしては、分裂文、コピュラ文、関係詞構文等がある。これらの現象を統合して、英語の機能投射構造が、動的に変化している様子を記述分析し、言語の中で機能投射構造がどのような役割を持つかについて考察を深めていく。また、こうした現象が言語進化を論じる上でも、重要な課題であることも提示したい。
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Research Products
(3 results)