2011 Fiscal Year Annual Research Report
生成文法における長距離依存の局所性に関する理論的及び実証的研究
Project/Area Number |
22520511
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石井 透 明治大学, 文学部, 教授 (30193254)
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Keywords | 生成文法 / 極小モデル / 局所性条件 / 受動態 / 主語条件 / かきまぜ規則 |
Research Abstract |
長距離依存に関する「局所性条件」は、生成文法初期から常に中心的な研究課題の一つであり、現在でもその重要性は変わらない。しかし、局所性条件に関する研究課題の中には、以前の枠組みでは詳細に取り扱われていたが、現在の枠組みである「極小モデル」では未だに殆ど手つかずに残っているものが存在する。本研究は、そのような研究課題を、これまで積み重ねられてきた局所性条件に関する研究を現在的視点から見直すことを通じて抽出し、極小モデル下での解決策の提示を目指している。 今年度は、主として「長距離受身文」および「主語条件」についての研究を行った。「長距離受身文」は英語などの言語では不可能であるが、日本語では分布が限られているものの可能である事実を指摘した。そして、この言語間の違いは、A移動に関する局所性の違いではなく、日本語で「大主語」が可能であることに帰することができると主張した。すなわち、日本語の「長距離受身文」の主語は、補文の目的語の位置から移動したものではなく、補文の「大主語」の位置に基底生成され、その位置からA移動によって直接主文の主語位置へ移動すると主張した。これによって、「長距離受身文」の分布が限られていることなどの現象を説明できることを示した。「主語条件」に関しては、日本語では「主語条件」が存在しないとこれまで指摘されているが、述語の種類によって日本語においても「主語条件」が現れる場合があることを指摘した。そして、この述語による「主語条件」の有無は、「かき混ぜ規則」とRemnant Movementによって説明できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所性条件に関する研究は、学会発表などを通じて順調に進展している。その一方、昨年度・一昨年度ともに学会発表に基づいた論文集が発行されることになっているが、出版元の作業の遅れのために、未だに発行されていない状況である。以上のように、研究自体の進展は順調であるが、研究成果の発表という面での遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
局所性条件に関する研究は順調に進んでいるので、今年度もこれまで同様に進めている予定である。ただし、これまでは「内部併合」(=移動)に関する局所性を中心に研究してきたが、最近のラベル付与についての議論を鑑み、併合と選択の局所性についても研究の視野を広げる必要があると考えられる。従って、今年度以降は、選択の局所性についても視野に入れて研究を行う予定である。
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Research Products
(4 results)