2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520513
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 眞理 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20247779)
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Keywords | 言語学 / 日本語 / 英語 / 省略 / 動詞句 |
Research Abstract |
本年度は1と2の作業項目に取り組んだ。得られた主な成果/作業仮説は3と4である。 1 英語の動詞句省略(VP-ellipsis, VPE)に関する最近の重要な研究/理論を詳細に検討し、VPEの生起メカニズムと認可条件に関する作業仮説を選ぶ。 2 英語のVPEの認可条件を決定する決め手となる構文に対応する日本語文について、その適格性と解釈に関するメタ言語的判断の聞き取り調査を行う。 3 (1)VPEは「文脈照応弱化」が最大限に適用され、対象となる構成素の全音形が削除される現象の一つであり、代用表現とは異なりLF表示を持つ先行詞を必要とする。 (2)先行詞となるVPを含む構成素αと省略されるVPを含む構成素βは「適切に対比される」必要があり、αとβは次の2条件を満たす必要がある:(1)重複部分を持たず、(2)β内でcontrastive focusを持つ部分を除けば同じ意味解釈を持つ。また、特殊な条件下以外ではαはβに先行する必要がある。 (3)βが決定されれば、その中で省略可能な最大の構成素が省略されなければならない。 4 英語のVPE認可条件決定の鍵となった多くの構文について、対応する日本語文に英語と同じ対比が見られた。日本語に英語と同じVPEが存在する証拠が得られたと言える。 (1)^★彼女は人が一生の間にしなければならないすべての苦難を一日で経験してしまった。 (2)彼女は人が一生の間に経験しなければならないすべての苦難を一日でしてしまった。 (3)この会社を退社したい人は皆、今すぐしてください。 (4)彼にこの会社を退社して欲しい人は皆、今すぐ^★(自分が)してください。 (5)太郎は花子が試験に合格すると確信しているし、次郎も(?花子がすると確信)している。 しかし、英語では安定した解釈が報告されている文に対応する日本語文の中に、日本語話者の多くがその判断に迷うものもあった。この要因の解明を今後の研究課題とする。
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