2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520513
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
高橋 眞理 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (20247779)
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Keywords | 言語学 / 日本語 / 英語 / 省略 / 動詞句 |
Research Abstract |
本年度は、英語の動詞句省略の生起メカニズム(発音されないVPのLF表示の詳細、そのVPが発音されない理由)とその認可条件の同定の試みの中で議論され続けている、"sloppy VP puzzle" (cf. Hardt (1999),Schwarz(2000),Tomioka(2008))と「先行詞を含む省略(ACD)」の2つの現象に焦点をあて、日本語に同じ現象が存在するか、そして、これらの現象が理論的にどのように説明されるのか、に関して調査した。得られた結論/作業仮説は以下の通りである。 1.日本語にも英語と同じsloppy VP現象が見られる。 (1)A教授は、自分が学会に参加する時は弟子達も皆することを期待しているし、自分が学会をボイコットする時もしている。 (「弟子達も皆学会をボイコットすることをA教授が期待している」というsloppyな解釈あり。)この現象の存在は、発音されないVPがpro-VPであることを示すものではなく、談話の中に適格な先行詞を持つ"full VP"の「音形削除説」が維持できる。しかしこの現象の全体像を説明するためには、統語表示でF-markされるcontrastive focusと、G-markされるdiscourse given構成素を区別する必要がある。(cf. Selkirk(2002,2008)) 2.日本語でもACDが起こる。ただし、関係節を含む数量詞句は文頭に移動される必要がある。 (2)a.^*ホームズはロンドン警視庁が調査したすべての事件をした。 b.ロンドン警視庁が調査したすべての事件を、ホームズもした。 これは、動詞句削除の認可条件のうち「削除されるVPとその先行詞が重複部を持ってはならない」という条項が、日本語においては「表層構造」で満たされる必要があることを示している。 (cf.Johnson(2008))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付額の決定が遅れ、実行可能な実験の規模を決めることが難しく、理論の研究に重点を置いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、動詞句削除構文と関連構文の適格性と解釈の可能性について、まず幅広く聞き取り調査を行い、23年度の研究で得られた結論/作業仮説を検証するために有効であると考えられる構文を絞りこんだうえで予備実験と本実験を行う。
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