Research Abstract |
23年度は,パブリックスピーキングにおける式辞スピーチのジャンル分析を引き続き行った。また,日本語教育関係者と外国人日本語使用者への聞取り調査を行い,パブリックスピーキングの教授法開発にあたってのニーズを探り分析を行っている最中である。これらの調査から,以下のことが明らかになった。 まず,式辞スピーチのジャンル分析の結果,「導入」および「結び」部と,「主題」部とでは,頻出するムーブに違いあること,定型表現に違いがあることが昨年度までにわかっているが,さらに,3つの部分に共通に現れるムーブもあることがわかった。それは,「言及」のムーブで,話し手が聴衆や関連する事項に言及するタイプのものである。これは,式辞スピーチのような社会的には非常に改まった場面で,話し手が常に聴衆を意識して即興的に他者を言及していることになり,スピーチが話し手から聞き手に一方的に行われている発話ではないことを表していると言える。 次に,パブリックスピーキングの教授法開発のためのニーズ調査については,日本語教育関係者と外国人日本語使用者へのインタビュー調査の結果,教育関係者が目指すものと,実際に日本語を使用して勤務している外国人話者との間では,求めているものに多少ずれがあることがわかった。また,海外の日本語教育の現場では,日本国内でそれほど重視されていない「スピーチコンテスト」におけるスピーチの指導が重要な機能を持ち,教育の場でも意識されていることが明らかになった。コンテストにおけるスピーチは,また,ビジネススピーチなどとは全く違うジャンルのものと考えられ,引き続き,データの収集やジャンル分析の手法による検討などが必要だという課題が浮かび上がった。 これらと並行して,外国で出版された教科書や採用されている教授法についても,データ収集を行ったが,今後も引き続き,分析を続けて行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究課題の推進方策は,おもに3つの部分に分かれる。1)パブリックスピーキングの収集データのジャンル分析,2)日本語教育関係者と外国人日本語使用者へのインタビュー調査の分析とニーズの抽出,3)これらの結果を総合した上で,パブリックスピーキングの教授法の提案,の3つである。 研究計画を策定した時点では想定しなかった新しいパブリックスピーキングのジャンルがあることもわかったため,そのようなことも考察しながら,採集年度における教授法の提案ができるように,計画を遂行していきたいと考えている。
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