2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本語のgood writing:第2言語と第1言語による比較
Project/Area Number |
22520542
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
田中 真理 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (20217079)
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Keywords | 日本語教育 / ライティング評価 / 評価者 / 第二言語としてのライティング / 第一言語としてのライティング / 構成 / パラグラフ / 読み手 |
Research Abstract |
本研究の目的は,第2言語(L2)としての日本語と第1言語(L1)としての日本語で書かれた小論文を比較・検討することにより,より広い視野から日本語小論文のgood writingの要素を追求することである。 平成23年度は,ライティング評価を広い視野から捉えるという観点から,8月のEAJS International Conferenceにおいてパネル「評価の「個人差」に着目することの意味-より深い自己認識につなげるための評価論-」を行った。また,12月には第二言語習得研究会大会のパネルディスカッション「フィードバックの効果を考える」においてL2ライティング・フィードバックについて話す機会を得た。 L2小論文とL1小論文を比較してみると,共通点もある半面,異なる面も認められる。今年度からは,good writingの要素を絞って,以下の観点から分析を行っている。 (1)Reader awareness(読み手を意識して書かれているか): Hinds(1987)によるreader responsibilityの言語(例:日本語や中国語)と,writer responsibilityの言語(例:英語)に分けて分析する (2)小論文の構成: マクロ構成(序論,本論,結論)とパラグラフ内の構成(topic sentence, supporting sentences, メタ言語)に焦点を当て,比較する。 データに関しては,L1ライティング(日本人),L2ライティング(中国語話者と英語話者)の小論文の収集とreader awarenessについてのアンケート調査を行った。しかし,中国語話者と英語話者とでは,L2 proficiencyの違いがかなりあり,比較の難しいことが分かった。そこで,24年度も,引き続き,英語話者のデータ収集をアメリカの大学(上級学習者の多い大学)で収集する計画を立てている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語ライティングと英語ライティングの文章構成やパラグラフについての資料収集,分析は進み,違いも明らかになりつつある。データ収集に関しては,L1ライティング(日本人)とL2ライティング(中国語話者)は順調にできたが,英語話者のL2 proficiencyが中国語話者よりかなり低く,比較のできないことが判明した。また,両者のproficiencyを測る共通の尺度がなく(英語話者で日本語能力試験の1級保持者は殆どいない),検討課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
・上記11の英語話者のデータ収集に関しては,アメリカの大学(上級コースのプログラムがある大学)で小論文執筆の協力者を募集する計画を立てている。 ・日本語と英語の文章構成・パラグラフ自体の研究は進んでいるが,どのような基準を用いてL1ライティングとL2ライティングを比較するか,さらに,どのような基準を用いてgood writingの要素を決定するか,検討中である(当初は,ライティング評価を依頼して上位に入った小論文を分析する予定であったが,評価者の信頼性の問題もあり,他の方法を検討中である)。
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