2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ共通の言語政策とチェコおよびスロヴァキアの多言語性マネージメント
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22520548
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 聡 北海道大学, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (40198677)
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Keywords | 言語政策 / チェコ / スロヴァキア / EU / 欧州評議会 / Language Management Theory / 移民統合 / ロマ |
Research Abstract |
21世紀以降のヨーロッパにおいて、EUや欧州評議会などのイニシアティヴにより超国家的な次元でヨーロッパ共通りの言語政策が成立していく過程を視野に収めながら、その本質、成果、問題点を、チェコ共和国、スロヴァキア共和国の事例に則して明らかにするため、今年度は以下の研究を行った: 8月:スロヴァキアを訪問し、現時点における社会言語学的状況の調査および文献資料調査を行った。かねてからコンタクトを試みていたドイツ系、ユダヤ系住民は老齢化が進み、調査が困難になりつつあることを確認するとともに、現時点のスロヴァキアにおける多言語性マネージメントの根本的な問題がハンガリー系、ロマ系住民の若年層にあると判断し、今後の調査の段取りを整えた。 9月:かねてからコンタクトをとっていたカレル大学(プラハ)の社会言語学者2名を札幌に招聘し、国際シンポジウムを開催した。多言語性研究と言語管理理論との関係を論じる導入的発表を行った。 3月:北海道大学スラブ研究センターで開催された日本西スラヴ学研究会研究発表会において、「EU東方拡大と超国家的言語政策」と題して口頭発表を行った。EUの多言語性マネージメントにおける中東の言語の地位、中欧諸国における外国語教育の最新動向、チェコとスロヴァキアの移民統合政策における言語教育について、さまざまなデータを用いて検討した。 その他、11月に北海道大学スラブ研究センターと国際スラヴィスト会議スラヴ諸語文法構造研究部会が共同で主催した国際シンポジウム「スラヴ諸語における文法化と語彙化」の大会組織委員として運営にかかわり、また、日本西スラヴ学研究会の企画編集委員長として学会の運営と学会誌の編集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの2年間で、国外での招待講演および全国学会での発表を1回ずつ行ったほか、自ら企画した国際シンポジウム2件を開催し、国際学会や全国学会の大会組織運営にもかかわったものの、本研究の中間的な成果取り纏め(論文化)が遅れている。全体として、多岐にわたる業務の処理に手間取ったことが遅延の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
チェコとスロヴァキアにおける多言語性マネージメントの歴史的変化については、当初は概説的な文章を作成する予定であったが、独自の観点を前面に出し、また効率的に成果を公開する目的で、同地域におけるドイツ語の地位の変化に焦点を当てるというアプローチに変更する予定である。また、現地調査については、チェコの研究者を対象とする聞き取り調査は今後の目標とし、本研究の枠内では行わないこととし、東スロヴァキアのハンガリー系、ロマ系の児童生徒を対象とする調査に注力して3年目の研究で実現させたい。
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Research Products
(3 results)