2011 Fiscal Year Annual Research Report
事態把握の認知枠が第二言語習得に与える影響:英語・日本語・韓国語の対照的研究
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22520556
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
守屋 哲治 金沢大学, 学校教育系, 教授 (40220090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 薫 名古屋大学, 国際文化研究科, 教授 (70181526)
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Keywords | 言語習得 / 英語 / 日本語 / 韓国語 |
Research Abstract |
研究代表者(守屋)は、前年度に収集した日本人英語学習者のライティングデータを用いて、テンス・アスペクトに関してどのような誤用が傾向として多くみられ、そこからどのような認知枠の違いが見られるのかについて分析を行った。その結果、テンスに関する誤りは、複文中のほうが多いことが明らかにし、その原因が日英語のテンスの体系の違いが顕著に表れるのが複文であることから説明できるとした。 アスペクトについては、「ている」のカバーする意味領域が英語においては複数のアスペクト表現の領域と重なっていることから、重なりがみられる部分の誤用が多いことが明らかとなった。 さらに、複文構造に関連する現象として、主節の否定辞が従属節にかかる解釈を受ける否定辞繰り上げの現象にも注目し、認知枠の観点からこれらの日英語における共通性及び相違点に関する研究を開始した。 一方、研究分担者(堀江)は、日本語と韓国語の対照の観点から認知枠の違いについての研究を行った。特に、主要部内在型の関係節の日韓対照を通して、文法構造とそれが示す機能の対応関係には、日本語と韓国語では体系的な違いがあることを示し、この体系的違いが認知枠の違いにつながるものとして捉えられる可能性を示した。また、日本語母語話者と日本語学習者との語用論的ストラテジーの違いにも着目し、分析を行っている。 以上のような成果は、移動様態動詞の研究から端を発した認知枠の違いという観点が、文法の様々なレベルでも見られることを示している。また、このような捉え方をすることにより、これらのレベルの多くの理論的研究が言語教育に貢献する可能性を与えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は日本語と英語の対照研究から、テンス・アスペクトの認知枠の違いについて分析を行い、研究分担者は日本語と韓国語の対照研究、および非日本語母語話者と日本語母語話者の言語行動の対照などから認知枠の違いに迫っているため、おおむね研究の目的通りに進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が本研究課題の最終年度になるため、研究代表者・研究分担者がそれぞれ行っている分析をまとめ、さらには、お互いの研究成果を整理して、認知枠の違いに関する一般性を考察する。さらに、いままでの分析・考察に基づいて、言語教育に対して有益となるような実践的指導に対する理論的基盤を提供する。
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