2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本人英語学習者による項構造の習得-結果構文と受動構文を比較して-
Project/Area Number |
22520575
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲垣 俊史 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (00316019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 スーチン 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50405354)
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Keywords | 第二言語習得 / 英語 / 日本語 / 項構造 / 受動構文 / 結果構文 / 母語の影響 / 学習可能性 |
Research Abstract |
23年度は主に次の二つのことを行った。一つ目は、これまでに既に行った日本語話者による英語の受動構文の習得に関する研究(実験1)のデータ分析を進めた。仮説通りに、日本人英語学習者は、日本語のみで可能な間接受身の過剰般化(e.g.,I was stolen my bike)を起こし、この現象は上級レベルでも消えくいことを、本データは示している。L1で可能な構造がL2では不可能である場合、このことを示す肯定証拠が存在しないため、L1の影響が消えにくいこと(仮説1)を支持する新たな証拠と言える。現在、このデータに基づき論文を執筆中である。 二つ目は、日本人英語学習者による結果構文の習得研究(実験2)のためのタスクの開発である。 受動構文の習得研究に倣って、翻訳タスクと、絵を伴った文法性判断タスクの2種類の開発を行った。 数人の英語母語話者のインフォーマントのチェックも受け、タスクの妥当性も確認できた。あとは今年度前期の実施を待つ状況である。この実験2の結果から、日本人英語学習者は「弱い」結果構文(e.g.,I painted the wall red)のみを容認し、「強い」結果構文(e.g.,The horses dragged the logs smooth)を容認しない段階から、習得が進むにつれて、両タイプの結果構文容認する段階に移行すること-つまり、L1で可能な項構造の現れがL2より狭い場合は肯定証拠により学習可能であること(仮説2)-が支持されれば、第二言語習得の成否はL1転移と学習可能性の見地から説明できるという主張の新たな証拠となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
結果構文習得研究のための実験タスクの作成に予想以上の時間がかかったため。これは、多分に下の12に述べるように、当初計画していた質問紙によるオフライン・データの収集に加えて、コンピュータを用いた文処理のオン・ライン実験も行うべきであると考え始め、そちらの検討・開発にも時間を費やしているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた翻訳タスク、判断タスク以外に、文反応時間を測定するオン・ライン実験も実施することとした。ただし、この実施にあたり、反応時間を用いた研究法に習熟する必要がある。幸い、この手法に詳しい同僚がおり、実験器具も備わっている。同僚にアドバイスを受けながら、なるべく短期間に実験をデザインし、実施までにこぎ着けたい。いずれにせよ、より興味深く、質の高い研究の実現のためであり、最善つくす所存である。
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