2012 Fiscal Year Annual Research Report
談話構築プロセスと学習環境要因の関連性:社会文化的観点からの考察
Project/Area Number |
22520582
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中浜 優子 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (50343215)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 談話分析研究 / 第二言語習得研究 / ナラティブ分析 / 社会文化理論 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究の目的は, 第二言語である英語で談話構築をする際,第二言語を学んだ学習環境が如何に発話に影響を及ぼすのかを解明する事である.研究対象者は日本人ESL(English as a second language)学習者と日本人EFL(English as a foreign language)学習者で,英語母語話者との会話の中でのナラティブを様々な切り口で考察した.平成24年度は,日本人英語学習者の会話データ収集及びアンケート調査をアメリカと日本で行った.また,平成24年6月には,ナラティブ研究第一人者であるDr. Michael Bambergによるワークショップを開催した.ワークショップでは,「憤慨の経験のナラティブ」を取り上げ,話者が動作主の場合と被動者の場合でのナラティブで産出された言語形式比較についてのディスカッションを行った. 平成25年1月には,国際学会において,パイロット研究の会話データを談話標識使用という切り口から分析した結果を発表した.学会では,日本の大学で教鞭を執る英語教育学者数名と主に英語教育学についての意見交換を行った.ESLデータを収集するため渡米した3月にはワシントンDCで数名の研究者と打ち合わせを行い,今後の分析の参考とした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事情により,アメリカでのデータ収集が年度末の3月に遅延した.しかし,若干の追加のデータ収集が必要なものの,一年で結果をまとめることは不可能ではないと考える.日米での英語学習者の談話データ・アンケート調査収集が概ね終わり,残すところの大きな仕事は,文字化・コード化・データ分析である. パイロットデータ分析を社会文化理論の枠組みで再検討するにつけ,研究協力者である,社会文化理論と生態論に詳しい,著名なアメリカモントレー国際大学院大学のDr. Leo van Lierを日本に招聘し,共同研究発表・打ち合わせを行う予定をしていたが,van Lier氏の大病が発覚し,数か月の闘病の甲斐なくご逝去なさるというご不幸に見舞われ,叶う事はなかった.van Lier氏との共同発表・研究の打ち合わせは出来なかったが,平成24年6月に,ナラティブ研究の第一人者であるマイケル・バンバーグ氏と,慶應義塾大学でナラティブ研究につき,ディスカッションを行った. パイロットデータで得られた英語学習者のナラティブは,意味交渉,談話標識使用の観点から分析し,EFLとESLのナラティブ比較を行った.研究結果は The 11th Hawai'i International Conference on Education で口頭発表し,パイロット研究結果の一部が予稿集に掲載されている. 機能言語主義的アプローチの枠組みで今まで行ってきた三人称ナラティブ分析と異なり,本研究では,実際に話者に起こった経験を話してもらい,話し手と聞き手との「関わり」のストーリー構成,ひいては会話全体への影響も考察した.従来の研究がプロダクト重視だったのに比べ,今回の分析では,話者だけでなく聞き手との関わりを重視した社会文化的な観点から,学習者言語産出までのプロセスを詳述する事ができ,分野に貢献できたのではないかと考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,本科研費による研究の最終年度であることから,研究分析を終え,結果を論文に残す事を目標とする.データ収集で未完のもの(母語話者データと英語学習者データの不足分)については,前期中に終了させる予定である.それと同時に,今まで収集してきたデータの文字化・コード化・分析を進める. コード化・分析の具体的な項目としては,一人称ナラティブにおける主体の連続性・非連続性,意味交渉・フィードバック等を含む対話者とのインタラクション,話者交代,タ―ンの維持,発話の重複,あいづち等を考えている.秋・冬には国内外の学会もしくは研究会で研究成果を発表するよう進めて行く予定である.昨年度は「現在までの達成度」で述べた事情により,研究結果を論文という形にまとめることが出来なかったため,最終年度以内には何とか学会誌等への論文投稿まで持って行く事を目標に研究を推進する予定である.
|