2012 Fiscal Year Annual Research Report
高専生と高校生の英語学習に対する動機づけの相違と英語能力の相関に関する研究
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22520611
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Research Institution | Asahikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 智己 旭川工業高等専門学校, 一般人文科, 教授 (70342441)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 動機づけ / 英語能力 / 因子分析 / クラスター分析 |
Research Abstract |
平成24年度は本研究の本調査3年の2年目である。普通高校と高専で2回目の質問紙調査と「英語能力判定テスト」を実施した。質問紙調査では1年次の調査で抽出された4つの因子を構成する質問項目を用い、その他の項目は学習習慣に関する項目と差し替えて英語能力との相関を新たに検証した。主な結果は以下の5点である:①「動機づけ指数」平均値の経年比較では普通高校で変化がなかったが高専では低下した(有意)。②英語能力の伸びは普通高校>高専であり(有意)、普通高校の方が上回ったが、伸び幅はともに限定的であった。③普通高校の普通科と専門学科間では英語能力が1年次に普通科>専門学科(有意)であったが、2年次では差がなくなった。また英語能力の伸びでは普通科<専門学科であった(有意)。専門学科で学習効果が上がっているのは「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の取り組みの一つとして実施している英語活動などの影響が考えられる。④1年次に因子得点によるクラスター分析で得られた4つのグループで英語能力のスコアの伸びを分散分析したところグループ間差は認められず等質であった。この結果は普通高校のみの場合、高専を併せた場合にも同じ結果であった。Group 2だけが他の3グループよりスコアが高いのは1年次の高スコアがそのまま2年次に維持されたと考えられる。⑤学習習慣に関わる質問項目群の平均値と英語能力の伸びとの相関は、高校でr=.08、高専でr=-.001と相関関係が見られず、英語能力の伸びは学習習慣よりも動機づけとの相関が高かった。これらの内最も顕著であるのが高専生に見られる意欲の低下であり、これまで主観的に捉えられてきた「学年進行とともに英語学習への意欲が下がり、英語能力の伸長も限定的である」という高専生の学習者像が裏付けられたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の最重要部分となるデータの収集については研究協力校の尽力もあり、欠損データとなる被験者の数はきわめて限定的である。しかし一方、高専の側においては原級留置者がいるために経年調査をできる被験者数が漸減している。この点については対応策がないが、高校で220名程度、高専で140名程度の被験者は確保できる見込みであり、分析に大きな問題は生じない見込みである 。本研究の本来の目的は多くの高専生に存在すると考えられる英語学習阻害要因を探ることにあるが、この現象の存在が確認・検証された場合にそれが一般化することが可能なものであるかを考える必要がある。この点ではさらに最新の文献にあたり多くの知見を生かす必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目のデータでは学年進行に伴って数値に変化が出てきており、6件法の質問紙調査と英語能力の測定によって量的分析を行っているが、そのような変化がどのような原因に起因するのかを特定するのは限界がある。これに対応するには別の質問紙調査を行うか、記述式の検査方法を導入することが理想であるが、協力校にかける時間的・労力的な負担を考えるとその実施は容易ではなく現実的でもない。そこで、多面的な分析を行う中で見えてきた現象とその背景にあると考えられる要因を吟味して、これまで実施してきた質問紙調査に若干の記述式項目を加えて実施することを検討中である。このような質的調査を組み合わせることで、なお一層、結果の分析の精度が上がることが期待できる。また、これまでクラスター分析によるグループ分けを中心に英語能力の伸長との相関を見てきたが、今年度はさらに英語能力の伸長の度合いにより上位・中位・下位の3グループに分け、学習成果の上がっている被験者とそうでない被験者の間にはどのような差異が存在するのかについても分析・検討を試みる予定である。
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Research Products
(1 results)