2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい文法教育のためのリアル・タイムと場面の制約のある言語形式の基礎的研究
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22520614
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
澤田 茂保 金沢大学, 外国語教育研究センター, 教授 (00196320)
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Keywords | 英語学 / spoken language / written language / 強調形式 / tag |
Research Abstract |
本研究の目的は、spoken language (SL)としての英語の音声資料を収集して、リアル・タイムで進行し、かつ対面状況で使われる英語について、書き言葉には見られない言語的特性を分析してSLの文法論の構築につなげる基礎研究を行うことである。平成23年度は、インタビューとTVドラマ等のスクリプトを集めて分析を行った。そのプロセスで明らかになったSLの興味深い言語形式について考察して、紀要雑誌に掲載した。 平成22年度はreal-timeの特性が先鋭に出ている言語形式(構文の構造的融合)などの研究を行ったので、平成23年度はもう一方の特徴である「場面性」(聞き手を意識している対面状況)という条件で発生しやすい言語形式の研究を行うこととした。この切り口は多面にわたるが、論考にまとめたのはSLに特有な「強調(emphasis)」(話者の確信度合いを高める方法)についてである。 例えば、She is really a bad driverは副詞を使った単純な強調文で、書き言葉でも見られる形式である。書き言葉に基づく文法論では、このような「文」を基礎とできるが、SLの文法論は文を基礎とせず、むしろ伝えるメッセージが単位となる。そのためセンテンスの前後に書き言葉には見られない形式が現れる。今回はとくに広義の「タグ」(付加形式)として、She is a bad driver, she really isといった強調形式について論じ、さらに、SLで見られる特殊なものとして、She's a bad driver, that's what she is.といった構造的には二文であるがメッセージとしては同語反復的である特殊な強調形式についても考察した。 言語学的な「強調」は本来的に発話状況の「対面性」に関係した手段である。話し手がなぜ自分の発話の力(force)を高めるかと言えば、眼前にいる聞き手を意識しているからである。SLでは、相手の反応が組み込まれるので、タグとして強調形式が頻繁に現れる。先行文献調査では、タグの研究として統語構造的な分析があるだけで、本研究のような視点にたつたものはなく、意義深い成果があがった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度までは主として音声データの収集と分析を行い、その過程で明らかになったspoken languageの特性を考察することである。ほぼ当初の計画を果たしているので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最終年度なので、研究の成果を教育関係者に対して示す機会を持ちたいと考えている。また、当初計画では、スポーツ放送の音声をデータ・ベース化し、その特徴などを分析することとしていたが、残念なことに国内では二言語音声によるスポーツ放送が中止され、資料を十分に集められない状況になった。そのため、ニュース放送の音声のデータ・ベース化を中心とすることとした。
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