2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520646
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
鳥井 裕美子 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50180203)
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Keywords | 日本史 / 国際交流史 / 外国語 / 蘭学 / 前野良沢 |
Research Abstract |
本研究の目的は、明治期以降に作り上げられた蘭学(洋学)史の内容と背景を吟味し、『解体新書』訳者としてのみ(それも杉田玄白の陰に隠れて)取り上げられる前野良沢に注目し、その多面的な業績と生涯を考究することで、草創期蘭学の実態と歴史的意義を国際的視野で解明するものである。 平成22年度の研究計画には、(1)明治期以降の蘭学(洋学)研究史の総括(2)前野良沢のオランダ語学習の先達である長崎阿蘭陀通詞の資料・文献の収集・解読(3)『解体新書』と原書「ターヘル・アナトミア」の対校(4)前野良沢のオランダ語関係資料の分析をあげた。このうち(1)では、福沢諭吉の諸著作を中心に考察し、明治20年代の蘭学者顕彰運動に至る過程の理解を深めることができた。次に(2)に関しては、同時代の出島オランダ商館長イザーク・ティツィングが離目後も日本人(阿蘭陀通詞・蘭学者・大名)と交わしたオランダ語の往復書簡を再度検討して新たな研究成果も加え、18世紀後半の日欧知識交流の実態を論文「ティツィング往復書簡集の世界」にまとめ、公刊した(荒野泰典・石井正敏・村井章介編『日本の対外関係6 近世的世界の成熟』、吉川弘文館、平成22年11月刊)。ティツィングは前野良沢の著作にも僅かながら登場する人物であるし、彼と文通した吉雄幸作(耕牛)・楢林重兵衛は、良沢の長崎遊学時のオランダ語学習に重要な役割を果たしている。本論文では、阿蘭陀通詞のオランダ語作文能力の検証も行った。また(3)(4)では、ともに論文にまとめるには至らなかったものの、『解体新書』の流布状況や良沢のオランダ語関孫資料に関する新しい情報を入手することができた。
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Research Products
(1 results)