2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520649
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
岡本 充弘 東洋大学, 文学部, 教授 (40113930)
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Keywords | 歴史理論 / 歴史叙述 / ポストモダニズム / 近代国民国家 / グリーバリゼーション / モダニティ |
Research Abstract |
本研究が基本的な目的としていることは、グローバリゼーションの進行の中で歴史認識・叙述が行われる単位が、その集団的な枠組みを変容させつつあること、および歴史認識や叙述における個人の役割を再評価するようになっていることの意味を考察していくことである。こうした問題意識にたって、本研究は平成23年度においては、7月に北京で開催された世界史学会、7月にアテネで開催された国際的な歴史研究集会、8月にオスロで開催された国際文化史学会、平成24年1月にシカゴで開催されたアメリカ歴史学会大会などに参加し、歴史研究における現在的な問題について海外の研究者と意見を交換した。とりわけ近年関心を呼びつつある歴史に対する文化史的アプローチ、さらにはアカデミックプレースにある歴史だけではなく、パブリックプレースにある歴史、つまり普通の人々が日常的な生活にある歴史についての検討を行った。その成果は業績欄に記されている成果として発表されている。またこうした活動と並行して本研究の研究代表者は平成23年度より採択された東洋大学人間科学総合研究所プロジェクト「トランスナショナル・カルチュラルヒストリーの今後」(予算額138万円)を研究代表者として推進し、歴史学の今後の方向性についての比較史・文化史的側面からの検討を行った。その一環として「戦後史学と社会運動史」というテーマで戦後歴史学の再検討を多くの歴史研究者と協力して行なった。以上の研究活動をふまえて本研究は平成23年度はその成果を業績欄に記された論考として発表した。なおこれらは本研究の研究代表者が本研究に先立って行った「グローバル化時代における歴史認識の方法」(平成19年度~21年度科学研究費基盤研究(C)採択課題)において示された成果とともに、平成24年度9月に論文集『開かれた歴史』(御茶の水書房)として刊行される。ナショナライゼーションやグローバライゼーションにともなって形成された歴史の共同性への疑問を提示し、一般の人々の中にある過去認識から歴史をめぐる問題を方法的に考察していくことの意味を明らかにいつつあるという点で、本研究は歴史研究の今後の方向性をめぐる議論において、一定の貢献をしていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)の評価をする理由は、平成22年度~23年度において、国際的な歴史機関誌(Storia della Storiografia),海外での学会(International Congress of Historical Scienceなど)での発表、さらには世界史学会(WHA)、国際文化史学会(ISCH)、アメリカ史学会(AHA)などの大規模な海外での学会に参加し、積極的な意見の交流を行い、成果を海外に発信したからである。さらに国内的にも、『思想』『歴史学研究』さらには『歴史評論』(平成24年4月刊行)といった幅広い読者をもつ研究雑誌を通じてその成果を公表できた。またこれらの成果を集めたかたちで論文集を刊行する準備作業が進み、こうしたなかで研究代表者の独創的見解への評価が生じつつあるといえるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調であって、それほど大きな変更点はない。ただ海外との交流を重視するという研究の性格上、研究計画(とりわけ海外研究者との交流という点)に関しては若干の予定の変更が生じざるを得ない。その一例は平成24年に予定されていたヨーロッパ社会科学歴史会議(ESSHC)での発表が、パネルの取り消しで実現できなかったことや、海外研究者の招聘が予定候補者の事情によって実現できなかったなどがある。また研究成果を著書として海外でも公表すべく準備作業を行っているが、実現はそう容易ではない。いずれも解決の難しい問題があるが、今後継続的な努力を続けて、研究の充実をはかりたい。
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