2011 Fiscal Year Annual Research Report
経典目録よりみた古代国家の宗教編成策に関する多面的研究
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22520659
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中林 隆之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30382021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 真 花園大学, 文学部, 講師 (90507138)
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Keywords | 日本史 / 古代史 / 経典目録 / 東アジア世界 / データベース / 仏教 / 外典 / 寺院 |
Research Abstract |
1.今年度は、経典目録類の検討をふまえ、それを学会発表・論文として公表することに注力した。 この点では大きな成果があがったが、反面、経典目録のデータベース化作業・web上への公表へ向けた作業は、充分には進展させることができなかった。よってこの点は、最終年度の課題となる。 2.全国規模での学会で大会報告を行った。すなわち、歴史学研究会大会の古代史部会にて口頭発表を行った。前近代の人間集団の政治的凝集に、世界宗教が果たした役割について、古代の仏教を事例として東アジア規模で考えた。その課程で、当初は充分に展望できていなかった、東アジア的規模での仏教的<政治-宗教>関係の広がりを「都」と「山」の集積・総和として把握するという視座や、外典の流布と仏教との関係、さらには前近代における宗教を介した遠隔地交易のしめる比重の高さについての大枠的な見通しことができた点は、大きな収穫であった。 3.論文を2本公表した。一つは上記の歴史学研究会大会古代史部会報告を活字化したものである。東アジアでの仏教を軸とした<政治-宗教>関係の形成と広がりや、日本を含む各地域ごとの受容形態の偏差について考えた。もう1点は、昨年度の学会発表をもとに活字化したもの。7世紀の朝鮮半島諸国と倭国との対等的外交関係の定立の背景に東アジアでの僧侶同士の「師友」関係が存在したことを指摘した。いずれも経典目録群に記された経典類の請来とその修学の背景にある東アジア規模での僧侶集団の共同組織の実態を政治関係や教学面を含めて解明するもので、その意義は大きいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この間の研究を通して、古代国家の宗教編成策について考えるという当初の目的を越えて、国家に凝集しきれない前近代の人間の宗教を介した政治的諸関係の実態について、東アジア規模の見通しを得るという大きな成果をあげることができた。しかしながら、経典目録群・正倉院文書の目録の復原やデータベース化、およびその公開作業についてはやや遅れており、全体的として評価した場合、(2)に落ち着くと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
やや遅れている、経典目録群とりわけ正倉院文書に関するデータ整理と公表について、研究分担者とも密に相談しつつ精力的に進める。同時に、これまでの成果や最終年度の研究成果をもとに、研究成果報告書を作成し、広く学会に公表していく。
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Research Products
(4 results)