2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520665
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 良平 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30135503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 勝也 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80202290)
鈴木 久男 京都産業大学, 文化学部, 教授 (50460671)
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Keywords | 平安京 / 都市 / 空間 / 住宅 / 居住 |
Research Abstract |
本年度は、第一に個々の居住・住宅について、法的な側面から、貴族の邸宅・家の自律性もしくは非自律性を、とくに院政期に焦点をあて、院権力と邸宅;家の裁判権の側面から検討した。院権力は検非違使と権門を媒介し、権門内部に不介入の可能性がある。 本年度は新たな事態として、平安京右京三条一坊六町の調査が進行し、六町が右大臣藤原良相の西三条第と確定した。この事態に応じ、九世紀の右京の貴族邸宅を、西三条第や淳和院を取り上げ、右京の邸宅の個性を再検討した。また、調査成果の中間報告を行い、新出の池は9世紀第三四半期に収まり、旧来の池などは9世紀末~10世紀初頭に廃絶するとの知見を得た。 第二の居住・住宅の集合もしくは分散の論点の基礎として、鎌倉時代の西園寺家の邸宅の変遷を解明する作業を行った。西園寺家は上京地区の繁栄の中心であるが、公経が北山第など主要な邸宅と別業を完成し、実氏以降、邸宅を院御所・里内裏に提供する。北山第は実兼が引退後の邸宅とするが、現地を綿密に調査し、その庭園の復元を目指した。鏡湖池はあまり変化せず、滝は不動明王の石室の北側で、両者が結びつき、池は滝の水を用いる。 都市内部の一定の地域・空間の個性の問題では、平安京左京南部(八条・九条)の街区形成を考察し、平安後期に遺構が増加し、室町時代に急速に消滅すること、鋳造遺構・遺物は八条二坊東端から三坊西半(梅小路以北)に集中することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究の目的のうち、個別の貴族邸宅については、貴族邸宅の法的側面を院政期を中心に検討した。また、予定通り、左京南部を綿密に考察することができた。さらに、西三条第を詳細に検証し、上京地区の中心である西園寺家・北山第を分析できたのは大きな成果である。一方、上京地域の個性の問題、中国の隋・唐の都城の坊や十字街など、貴族や庶民の居住のあり方については、取り上げることが出来なかった。しかし、前者は来年度に検討の予定である。後者は報告を依頼したが、報告予定者の不慮の逝去のため、中止の止む無きとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、本年度は、西三条第の発掘の重要性に鑑み、西三条第を重点的に取り上げ、邸宅の貸借・融通関係など、広く<居住と住宅>の観点から検討する。第二に、居住・住宅の集合もしくは分散(一定の地域・空間)の論点では、中世の上京地区を考察し、一定の成果がまとまった段階で、その内容を討議する機会をもつ。また、平安京左京の一条から五条の地域性・空間性を、文献史料を中心に解明する。 第三に、第一・第二を踏まえて、平泉・鎌倉などの都市と関連づけ、平安京・中世京都の全体構造とその歴史的生成過程を展望的に見通す。
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Research Products
(5 results)