2010 Fiscal Year Annual Research Report
木簡・正倉院文書・編纂史料の相互比較による日本古代文書論の再構築
Project/Area Number |
22520667
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
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Keywords | 古代文書論 / 文書の機能 / 紙と木の使い分け / 文書伝達と口頭伝達 / 物品進上状 / 貢進荷札 |
Research Abstract |
本研究は、「日本古代文書論の再構築」を目的として、奈良時代の行政文書に焦点を定めて、木簡、正倉院文書、編纂史料の相互比較をおこなうものである。<文書の機能><紙と木の使い分け><文書伝達と口頭伝達との関係>に注意しながら、日本古代の行政システムを具体的に再現し、従来の文書様式論に変わる新たな枠組みの構築を模索する。 本年度は、平城宮・京跡出土木簡を素材に網羅的に史料収集をおこなった。本年度は特に物品進上状を取り上げ、<木簡の機能>面に着目しながら貢進荷札との違いを検討し、論文にまとめた。従来ともすれば、物品進上状・貢進荷札ともに物品の移動時に用いられる点で共通するとされてきたが、使者の傾向する物品進上状と、荷物に完全密着する貢進荷札とでは、決定的に異なることを明らかにできた。また貢進荷札として、志摩・若狭のそれを詳しく検討し、概要を口頭報告した。 さらに本年度は、正倉院文書・編纂史料を含めて<紙と木の使い分け>、<文書伝達と口頭伝達との関係>に関する幅広い史料を収集した。また、地方出土木簡や墨書土器などの調査も随時おこなった。これらの成果の一端は『すべての道は平城京へ』と題する単著のなかに取り込んだ。本書では、どのようにして情報伝達がなされ、使者が移動をおこない、物資が動いていくのかを多角的に論じたが、これまでよく使用されてきた編纂史料のみならず、正倉院文書・地方木簡・墨書土器などを多用することによって、その実態にある程度迫ることができた。
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