2010 Fiscal Year Annual Research Report
戦後保守思想の形成に関する史的研究-国家主義・皇国主義との関係を中心に-
Project/Area Number |
22520670
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
河島 真 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (00314451)
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Keywords | 日本近現代史 / 思想史 / 国家主義 / 皇国主義 / 保守思想 |
Research Abstract |
研究素材としている苦瓜恵三郎が残した自筆史料のうち、戦前(1932~1940年)、戦後(1956~1958、1967~1970年)の日記の写真撮影と翻刻を完了した。また、戦後に自筆で書き残した『回顧七十年』全10編の写真撮影も完了して、翻刻の準備を進めているところである。さらに、苦瓜の関係史料を保存している神戸大学人間発達環境学研究科(発達科学部)、兵庫県立神戸高等学校、金沢大学資料館・石川県文教会館での調査を行った。特に金沢大学資料館から紹介を受けた石川県文教会館では、そこでしか保存されていない貴重な史料の閲覧・撮影が認められたのみならず、苦瓜恵三郎が校長を務めていた当時の石川県師範学校生徒への聞き取りを行うことができ、高い成果が得られた。 翻刻した日記からは、天皇機関説事件によって国体明徴声明が出された1935年頃を画期として、苦瓜が次第に国家主義・皇国主義の主張を強めていく様子がうかがえた。石川県師範学校に校長として在職していた1937年当時、国民精神総動員運動に当たって既成政党に批判的な言動があったとして問題となり、石川県を離れざるを得なくなったことは今回初めて明らかになった事実であるが、既成政党と距離を置きつつ国家主義・皇国主義に傾いていくありさまは、当時政界を跋扈していた「革新派」の動向ともつながるものがあり、この時期の思想を立体的に捉える有為な素材になりそうな手応えが得られた。 なお、本研究の最初の成果として、日本近現代史の研究動向を整理する「『ファシズム論争』と十五年戦争期研究」(『日本史研究』576号、2010年8月)を発表した。
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