2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦後保守思想の形成に関する史的研究-国家主義・皇国主義との関係を中心に-
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22520670
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
河島 真 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (00314451)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 思想史 |
Research Abstract |
最終年度となる平成24年度は、史料の翻刻を終えて、「苦瓜恵三郎文書研究会」「戦後を考える研究会」の開催等を通して、史料の解析を進めた。 本研究の目的は、戦後思想の形成に当たって戦争体験のモメントを重視する小熊英二氏への批判を念頭に、戦後の保守長期政権を支えた民間知識人の思想が戦前から戦後へとどのように架橋されたのかを探ることであった。これに対する成果は次の通り。 ①苦瓜恵三郎はもともと自由主義的な精神の持ち主であったが、東京高等師範学校専攻科在籍中に紀平正美の講義を聴講したことをきっかけとして、著しい日本主義者に転じた。②戦後になっても苦瓜は、戦前の日本主義思想を基本的に維持していた。しかしそうした言説は、戦後高まった功利主義的・利己主義的な社会風潮への批判の言説して持ち出されてくる場合が多く、高度経済成長にともなって個人主義の傾向が著しくなると、規律主義的な言説として改めて鍛え直され、より強く押し出されてくるようになる。その意味で、単純な日本主義の継続、復活ではない。③苦瓜が日本主義を最後まで捨てなかった背景として、「戦中」体験ではなく「戦後」体験の重さが指摘できる。彼の中では、「戦中」体験が苦痛や反省を伴うものとして記憶されておらず、むしろ「戦後」の教職追放などがいわれのない苦痛として強く意識されており、戦前の国家主義・皇国主義が、栄光の時代の思い出とともに呼び戻されるのであった。 なお、本研究に関連して経過レポート「新日本同盟論」を執筆し発表した(『神戸大学文学部紀要』2013年3月)。年度末には報告書を作成し、大学文書史料室での公開準備、論文執筆も予定通り進められた。また、HPでの成果公開に向けての準備も行ったが、史料には個人の評価にかかわる記述が多く含まれており、その問題を処理する必要から、分析結果を先に公開し、史料そのものの公開は今後漸次的に進めることになる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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