2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520678
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
津野 倫明 高知大学, 教育研究部・人文社会科学系, 教授 (60335916)
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Keywords | 日本史 / 朝鮮出兵 / 軍目付 |
Research Abstract |
本研究では朝鮮出兵における軍目付の機能および実態を解明することを全体構想としている。2年目にあたる本年度は前年度の予備的調査をふまえて、以下のような史料収集と倭城跡の現地調査を実施し、史料の分析も進めた。 1.史料収集:(1)2月、東京大学史料編纂所において厚狭毛利文書などの史料調査(閲覧・筆写など)を実施した。(2)3月、東京大学史料編纂所において朝鮮陣朱印類などの史料調査(閲覧・筆写・複写など)を実施した。2.現地調査:(1)12月、戦線縮小論で存廃議論の対象となった順天倭城および比較的近くの泗川倭城の城跡などを現地調査した。この調査により、議論の論点となった順天倭城跡周辺の「干潟」や全羅道と慶尚道を隔てる「大河」譫津江などを実見しえたことは戦線縮小論を深く理解するうえで有意義であった。3.史料分析:(1)朝鮮陣朱印類に収録されている慶長2年8月頃の秀吉朱印状写の分析により、当時の部隊編成および軍目付の構成をほぼ確定しうる知見をえた。(2)慶長の役前半は右軍に従軍した垣見一直・熊谷直盛・早川長政の連署鼻請取状3通も含む黒田長政宛鼻請取状の分析により、次項で述べる研究成果がえられた。4.研究発表:(1)前記の鼻請取状の分析により、研究成果として研究論文「黒田長政宛鼻請取状について」を発表することができた。同論文では他の諸将宛鼻請取状と比較することで黒田長政宛鼻請取状の発給者(軍目付)の顔ぶれが多彩である点を指摘し、それは長政が所属する部隊の編成替が何度かあり、その編成替と連動していたとする仮説を提示した。(2)「13.研究発表」掲載の『臨海地域における戦争・交流・海洋政策』には拙稿「朝鮮出兵と長宗我部氏の海洋政策の一断面」が収録されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦地朝鮮からの報告や軍事行動といった軍目付の機能・実態を明らかにすべく、交付申請書における「研究実施計画」に2度の史料調査と1度の現地調査を掲げた。前者に関しては計画どおり東京大学史料編纂所において実施、後者に関しても計画どおり順天・泗川の両倭城跡において実施した。こうした計画の着実な実施により、これを前提とする史料分析も進んでいるので、本研究はおおむね順調に進展していると評価してよいと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究実施計画のうち史料調査1回が東日本大震災の影響で延期せざるをえなかったものの、繰越により本年度前半に実施できた。よって、この調査を含めて「研究計画調書」でたてた研究計画は本年度までおおむね順調に実施されてきたといえる。このような進捗状況をふまえるならば、次年度以降も「研究計画調書」の研究計画を堅実に実施してゆくことが最善の方策であると判断する。 なお、次年度に実施を計画している蔚山倭城跡・西生浦倭城跡の現地調査に関しては、気象条件などにより実施不可能な場合には「繰越制度」を活用して翌年度つまり最終年度に実施する対応策を考えている。
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