2011 Fiscal Year Annual Research Report
中世山口文化の実像とその比較史的考察-モノと場の視角から-
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22520684
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 幸司 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (30364128)
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Keywords | 肖像賛 / 源氏物語画帖 / 幻住派 / 湖亭春望図 / 雪舟等楊 / 天与清啓 / 禅宗 / 応仁度遣明船 |
Research Abstract |
23年度も、昨年に引き続き、中世山口文化を形成するモノとして大内氏に由来する肖像賛、「源氏物語画帖」関係史料、研究でキーワード考える「西周」という史料用語など関係史料の収集をおこなった。収集作業は、関係諸機関などでの史料調査のほか、現地でのフィールドワーク、『五山文学全集』『五山文学新集』などの刊本からの抽出を展開した。 これらの史料を収集する過程で、吉川史料館に所蔵される伝雪舟筆「湖亭春望図」の著賛時期について新たな知見を得ることができた。当該図は、入明直前の雪舟等楊が描いた水墨画に、遣明船正使として下向した天与清啓が周防山口で著賛したとされてきた美術史上の基準作品である。しかし、「相良武任書札巻」の新史料により、著賛時期が入明帰国後の可能性を指摘することができた。この事実は、雪舟等楊の作品研究にも少なからず影響を与えるものと推測する。 23年度は、中世山口文化に大きな影響を与えたと考えられる臨済宗幻住派に関する研究報告を山口市歴史民俗資料館と足利学校アカデミーでおこなった。山口における幻住派僧の拠点である洞春寺には、幻住派僧囎岳鼎虎関係の史料が存在し、あわせて開催された洞春寺展において関係史料の確認をすることができた。幻住派僧の影響は、その後、関東の足利学校にも及んでいることを、足利学校における報告では詳細に述べた。 なお、中世山口文化の基層ともなった禅宗文化については、「東アジア禅宗世界の変容と拡大」というテーマで『西国の文化と外交』において発表した。本稿では、14世紀後半から17世紀における東アジア禅宗世界の展開について、日本を中心にしつつ、明朝、高麗・朝鮮、琉球との海域交流の成果をふまえて論述している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関係史資料の収集も計画的に順調に進行しており、関連する口頭報告もおこない、一部を論文の形式で発表しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は最終年度であるため、過去2年聞で収集漏れの史資料の補充と、関連する地域のフィールドワークをおこない、情報の充実化に努める。あわせて、口頭報告等をしたものを逐次、活字化し、学会雑誌等へ発表していく。このため、前者を年度の前半期頃を目途に終了し、後半期は研究成果のまとめに集中する。
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