2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代日本の対渤海交渉と渤海王城との交流回廊に関する歴史環境学的研究
Project/Area Number |
22520693
|
Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
藤井 一二 金沢星稜大学, 経済学部, 特任教授 (00139742)
|
Keywords | 渤海使 / 遣渤海使 / 中京顕徳府 / 大野津 / 畝田・寺中遺跡 / 福良津 |
Research Abstract |
中国東北を中心に栄えた渤海国と日本の交流回廊に関する歴史的環境を考証するため、研究目的に基づき現地調査と資料収集を進めた。現地調査のうち、海外は中国吉林省延辺自治州地区(本年度は延吉・和龍市)の渤海遺産、国内は渤海客使の来着・経由地となった北陸(金沢・糸魚川)・山陰(米子・鳥取)・北九州(大宰府・福岡)各地の古代遺跡や博物館等を巡見し、資料の調査・収集を図った。 このうち、中国延辺地区では延辺自治州博物館を始めとして延吉市から龍井市を経て渤海早期王城=中京顕徳府址の位置する和龍市西古城周辺にかけて巡見することができ、海蘭河や龍頭山を中心とする地勢・環境の理解に資するところが大きかった。渤海国第3代王大欽茂の第4王女貞孝公主墓がある龍頭山を山麓から望見できたことも、今回の成果であった。龍頭山は、宮城址の確認されている中京顕徳府吐から地理的に近距離にあり、数多くの王族墓を造築できる長大な山脈であることが確認でき、近くを流れる海蘭河は布尓哈通河・図們江を経て日本海に通じており、中京顕徳府の交通・物流環境に重要な役割を担ったことが推察できた。 渤海と古代日本の交流関係を多面的に検証すべく、調査・収集と共に問題提起を含む研究報告を行った。第一回は2010年9月、遼寧師範大学主催フォーラムで「遣唐使と渤海使」を、第二回は同年11月、延辺大学主催「図們江学術論壇2010」において「古代日本の対渤海交渉と渤海早期王城」を報告した。両報告では、古代北陸の交流・滞在拠点としての機能を果たした能登半島(福良津)と金沢港(「大野」津)の連携を重視し、往時の地形を留める福浦港と「大野郷畝田村」(『日本霊異記』)に相当する畝田・寺中遺跡の歴史的環境を評価した。これらをニューズレター『東アジアの交流と文化遺産』I・II・IIIとして発刊するとともに、中国(大連・延吉)・国内(東京)の学会等において口頭発表し、次年度に向けて論文執筆への準備を進めた。
|
Research Products
(2 results)