2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22520700
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
細井 浩志 活水女子大学, 文学部・人間関係学科, 教授 (30263990)
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Keywords | 陰陽道 / 時刻 / 暦 / 漏刻 / 陰陽寮 / 大衍暦 / 天聖令 / 御霊信仰 |
Research Abstract |
当該年度はまず日本時間学会における口頭報告「日本古代における大衍暦の進朔限について」で、従来不明であった日本における大衍暦(およびその他の8~9世紀使用暦法)の進朔原則について、その変遷をある程度解明することができた。進朔は新月の時刻により暦月第1日目を翌日に延ばすことであり、1日の境界認識を解明する上で有用であり、日唐の進朔原則の比較により唐の情報の日本への伝播についても示唆が得られる。またSociety for Social Studies of Scienceにおける口頭報告"Formation of the Onmyodo and "Time" in ancient Japan"では、陰陽寮が担当する暦・時報の在り方が中国的な時間意識を中央・地方においてどのように浸透させたのかを、主に8~9世紀に関して推測した。これにより時間学会での報告と併せて、時間意識浸透の経緯について一定の見通しがついた。また国際会議での報告により、ある程度は日本古代における時間意識定着の問題に関して、他国の研究者にも関心を持って貰えたのではないかと考えている。また九州史学会における「日唐令に見える占星術関連規定と修史制度-天聖雑令との比較を中心に-」では天聖令に基づく唐の天文観測制度の復原と、日本の陰陽寮における制度の違いを検証して先行研究を批判し、併せて日本の修史制度についても検証した。この他、活字論文「『続日本紀』の怨霊記述ついて-藤原仲麻呂と御霊信仰の成立-」(『史聚』45)では、陰陽道呪術と関わる御霊信仰の成立時期とその理由について、『続日本紀』関連記事の精査と先行研究の整理により新たな見解を出すことができた。以上のように8~9世紀の時間観念と陰陽道形成に向かう陰陽寮の役割の解明について、一定の成果を得た。なお研究の過程で、最も代表的な宣明暦法に関する定朔計算法の解説として冊子『宣明暦の定朔計算法』を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも記したように、8~9世紀日本における、暦・時刻に関する実態解明と陰陽寮の制度および関連する社会思想に関して、複数の研究成果を出している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は口頭報告による研究成果が多く、活字論文は1本だけであった。また口頭報告に関しては、その後の調査でさらに修正・発展が見込めるものがある。これらの作業を進めて、その活字化を進める予定である。
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Research Products
(5 results)