2011 Fiscal Year Annual Research Report
宮廷工芸に関する物質文化的研究 ―生活感のある工芸史の構築をめざして―
Project/Area Number |
22520704
|
Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
猪熊 兼樹 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・列品管理課・貸与特別観覧室, 主任研究員 (30416557)
|
Keywords | 宮廷工芸 / 物質文化 / 公家階層 / 有職 |
Research Abstract |
本研究の目的は、前近代の日本の宮廷で用いられていた服飾・調度品などの物質文化を対象とし、公家階層の生活様式に基づいた宮廷工芸の分類体系を構築することにある。このように本研究の対象は、日本の宮廷工芸という特定事例であるが、その意義は歴史研究における物質文化的側面を深化させ、人間の生活感を反映する歴史の構築に資する工芸史研究の試論とすることにある。 本研究の研究方法は、A.史料に記録される宮廷生活における工芸品の調査、B.現存する宮廷工芸の実物資料の調査、C.現行の伝統的祭礼行事における宮廷工芸の用例の調査という3つの方法を併用する。これらの調査によって、宮廷工芸に関する文献史料や実物資料のデータを充実し、その分類体系を構築することで、物質文化的見地による工芸史研究を進めるうえでの基盤整備を図る。平成23年度は下記の調査を行なった。 A.宮廷生活記録の文献調査 宮廷の儀式行事に関する記録を、宮内庁書陵部・国立公文書館・国立国会図書館・無窮会・三康図書館の各機関が所蔵する史料のうちに求め、それらの複写を行ない、逐次、史料内容の検討を行なっている。その成果はアジア民族造形学会において口頭発表を行なった。 B.宮廷工芸の実物調査 東京国立博物館をはじめとする機関が所蔵する宮廷工芸の実物および図面資料の調査を行ない、宮廷工芸の形式の検討を行なっている。日本の宮廷工芸の形式は、中国・韓国の宮廷工芸との形式とともに検討する必要性を考え、それらとの比較検討も行なっている。その成果は所属機関である東京国立博物館の特別展図録に発表し、また講演を行なった。 C.宮廷工芸の用例調査 京都の葵祭・時代祭において用いられる服飾・調度類の調査を行ない、関係者のあいだに伝えられた伝承や技術の聞き取り調査を行ない、実物資料を取り巻く環境の検討を行なっている。その成果は中国四川省の国際学会において口頭発表を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要となる文献史料の大半を、前年度および今年度のうちに準備することができたため、その解読が順調に進んでいる。本研究に必要となる宮廷工芸の実物および図面資料、また祭礼行事などの調査が順調に行なわれ、その分析も順調に進んでいる。そして、それらの成果を公表することができているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究方法である、A.史料に記録される宮廷生活における工芸品の調査、B.現存する宮廷工芸の実物資料の調査、C.現行の伝統的祭礼行事における宮廷工芸の用例の調査という3つの方法を併用する方法は、宮廷工芸の実態を検討するうえで有効なものと思われるため、この研究方法を維持しながら進めたい。日本の宮廷文化には、東アジアを視野に入れて相対的に検討することが有意義であるため、そのような観点を積極的に取り入れて、将来的な研究にも備えておきたい。
|