2010 Fiscal Year Annual Research Report
明朝遼東鎮をめぐる官僚人事・政策形成・朝鮮関係の解明
Project/Area Number |
22520706
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
荷見 守義 弘前大学, 人文学部, 教授 (00333708)
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Keywords | 明朝 / 官僚体制 / 監察体制 / 遼東 / 朝鮮 / 巡按山東監察御史 / 被虜人 / 華重慶 |
Research Abstract |
交付申請書において、中国明朝(1368~1644)の辺境防衛の要である遼東鎮がいかなる役割を果たしたかを、官僚人事、政策形成、朝鮮関係から究明することを掲げた。本年度の研究においては、その全ての面に関して、新たな知見を論文にまとめたが、本年度に公刊された論文は2本であるので、それを中心に述べる。1点目は朝鮮関係であり、2点目は政策形成における情報の役割である。まず1点目であるが、朝鮮からの被虜人送還についての新見解である。明代の対外関係は、明朝を宗主国とし、朝鮮や日本、安南などの国家を藩属国とする「宗藩」関係として、中国からは認識されていた。ここで言う中国の認識とは極めて観念的、理念的色彩の強いものであって、現実とはかなりの乖離があった。ただ、明朝はこの理念を実現しようと動き、朝鮮や日本などに対して朝貢を働きかけた。明朝建国当時、倭寇の活動が活発であり、朝鮮半島や中国沿岸から人々が略取されることが多く起こった。この略取された人々を被虜人という。また、海域ゆえに漂流して他国に流れ着く漂流人も多々あった。朝鮮は中国の被虜人や漂流人を保護して明朝に送還することがあった。これは宗藩関係において必然の事項ではなく、関係を成立、維持しようとする両国の思惑的な行動が慣習化されたものであると結論付けた。 2点目として、遼東鎮で行われた取調行為には、情報生成の機能があることを遼東档案の分析から指摘し、今後の研究に一石を投じた。これは、遼東鎮において日々行われる審判の対象には、軍官の失態から家庭内や商売上のトラブル、また、ジュシェンの地から逃れて来た被虜人の保護・取調まであり、この過程で確定する情報はやがて、例えば朝鮮にもたらされる情報となるものもあった。このような点を今後、検討することは重要なことであると結論付けた。
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