2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520707
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
松井 太 弘前大学, 人文学部, 教授 (10333709)
|
Keywords | 中央アジア / ウイグル / 帳簿 / 古文書 / 歴史 / 税役制度 / 仏教 / 東トルキスタン |
Research Abstract |
(1)初年度に引き続き,中央アジア・新疆地域出土の古代ウイグル語帳簿資料について,既収集の写真複製・画像データに基づくテキスト転写・英訳作業を継続した。 (2)帳簿資料の解読データをその他の社会経済文書と比較検討して,10~14世紀の古代ウイグル社会における住民組織の実態を考察し,行政権力による人為的な住民編成組織以外の,社会経済上の必要にもとづく住民の相互保証的組織(連保)の存在を解明するとともに,それがおそらくウイグル支配期以前の唐王朝支配時代の連保制に淵源する可能性を指摘した。以上の内容を,アンカラ(トルコ共和国)で開催された「古代ウイグル文献研究国際学会(Besbalikli Singko Seli Tutung Anisina Uluslararasi Eski Uygurca Arastirmalari Calistayi)」で報告した。 (3)上記(2)の国際学会にあわせて,イスタンブル大学(トルコ共和国)所蔵の旧ベルリン所蔵古代ウイグル語文書資料群の写真複製を調査した。その中には,第二次大戦中に失われた資料が含まれており,特にウイグル支配期中央アジアの仏教・マニ教教団の運営に関わる帳簿など,歴史学的研究に重要な資料を数多く発見することができた。これらについては,現地研究者と共同で解読研究を行ない,2012年内に刊行すべく準備を進めている。 (4)ベルリン科学アカデミー(ドイツ連邦共和国)所蔵の古代ウイグル語帳簿資料群を実見調査した。 (5)その他,ウイグル語帳簿資料をとりまく社会経済史的背景として,下記(13)に記載の通り,仏教教団の租佃関係台帳にみえる地名の歴史地理学問題や,民間信仰の実態を示す断片的文献に関する論文を発表し,さらには行政命令文書の通時的書式研究などに関する研究報告を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テキスト校訂はほぼ順調に進捗している。また,未公開の新出資料の収集なども進んでいる。さらに,歴史学的考察に属する研究成果を,当初計画に先んじて公刊することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画調書記載の通り,平成24年度後半からは,帳簿資料の類型化とその歴史学的考察に,研究の重心を移行させる予定である。
|