2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国新疆ウイグル自治区におけるイスラーム聖地に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22520711
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
菅原 純 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (30420285)
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Keywords | マザール / カシュガル / ホタン / 聖者廟 / 巡礼 / ワクフ / 文書研究 / データベース |
Research Abstract |
プロジェクト第2年度にあたる今年度は、所期の計画通り情報の総合、調査、そして成果公開の3つのタスクにつき、以下の通り活動を実施した。まず情報の総合は連携機関新彊大学(民俗学人類学研究中心)との協議のうえ、「聖地データベース」のデータにつき、引き続きカシュガル地方の聖地情報の追加入力をおこなった。今年度の調査はもっぱら文献により、主としてワクフ(宗教寄進財)関連文書の記載から聖地関連財産の内訳などの情報の取得・整理を行った。そして成果公開については、9月に合衆国オハイオ州立大学で開催されたCESS(北米中央ユーラシア学会)でオンライン・リソースの構築に係るパネルセッションを組織し、構築中の整地データベースにつき報告を行った。また10月には合衆国プリンストン大学で開催されたイスラーム神秘主義に関するシンポジウム(招聘)において当プロジェクトで扱ったカシュガル地方の聖地関連ワクフの規模と分布に関する報告を行った。さらに10月末には東京で開催されたチベットの歴史と文化学習会主催シンポジウムで、11月にはオーストラリア国立大学で開催された新彊研究に関するワークショップで、それぞれ言語を違えて同一のホタン地方の聖地伝承の歴史的変容に関する報告を行った。国内、国外での学術会議における報告、講演は成果の学界ならびに社会への還元を促進するものであると同時に、研究課題遂行上有益な情報交換の機会であったといえる。以上、今年度は所期の計画をほぼ実施し、最終年度につなぐ成果が得られたものと結論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構築データベースのデータが当初想定していたよりも大容量かつ多岐に渡り、それを技術的にいかに一括処理すべきかという問題が顕在化してきているものの、データ収集作業そのものは初期の予定通り進捗しており、研究成果の公開もコンスタントに国内外の学会での報告を重ねており、ほぼ満足できる状況にあるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度の基本方策としては、本研究課題の最終目標である新彊ウイグル自治区における聖地要覧の編纂に向け、具体的な執筆ガイドライン、構成等を年度前半に策定し、後半は構築データベースのデータを策定した書式に一括変換し、不足情報を追加のうえ年度末までに電子テキスト(版下)を完成させることとする。 もっか懸念される問題としては、当初よりこの最終年度に予定していた連携機関のカウンターパート、ラヒラ・ダウト中国新彊大学教授の招聘(公開研究会開催と比較の手法による日本の聖地踏査を予定)の可否の問題がある。昨年度より続く尖閣諸島問題、さらに中国政府により反政府組織と認定されている「世界ウイグル会議」世界大会の東京での開催に係る中国政府の反発により、現在日中間の事実上の外交問題が噴出しており、このさなかにダウト教授が日本を訪問することは、教授にとり政治的不利益を蒙る懸念がある。本件についてはダウト教授と近近に協議を行い、もし些かなりとも懸念要素が実際に存在する場合は、すみやかに招聘を中止し、(1)日本側研究者(代表者)が逆に新彊大学を訪問する、あるいは(2)中国の沿海部の大学(現時点では広州の中山大学人類学系を想定)に会場を移し、そちらで公開研究会、聖地踏査を実施する、などの代替策を講じることとしたい。
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