2011 Fiscal Year Annual Research Report
ワクフ経済の社会史:16世紀ダマスクス州ワクフ調査台帳の研究
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22520712
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
三浦 徹 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (00199952)
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Keywords | イスラム / ワクフ / 寄進 / 文書史科 / 東洋史 / 経済史 / 都市 / ネットワーク |
Research Abstract |
本研究は、オスマン朝支配初期(16世紀)に編纂されたダマスクス州のワクフ(宗教的寄進)調査台帳の基本データを解読し、データベースを作成し、ダマスクス州の社会経済資源と寄進に関わる国家、集団、個人の社会関係を明らかにすることを目的とする。 23年度は、トルコ・オスマン文書館に所蔵される3冊のワクフ台帳のうち、22年度に着手した台帳602の寄進文書(1350件)の概要データベース(寄進年、寄進者、寄進目的、寄進物件種別)を完成させるとともに、詳細データ(寄進物件の種別、所在地、収入額)の解読とデータベース入力を行った。同時期の土地台帳401がトルコにおいて校訂出版され、そのデータとの参照・比較によって、解読と分析の精度を高めた。 当該調査台帳は、シヤーカトと呼ばれる財務関係記録に使用される特殊な書体によって記され、その解読には同時期の他の土地記録からも情報を収集し、また現地の研究者との協力も必要となる。このため、ダマスクス(シリア)での現地調査を予定していたが、23年4月以降シリアの政治情勢が不安定となり外務省による待避勧告・渡航延期がだされたため、24年8月にアンマン(ヨルダン)のヨルダン大学オスマン資料センター、アブダビ国立図書館などにおいて関連の資料閲覧や資料収集等の調査を行った。 24年3月には、「関西比較中世都市研究会」において、都市形成におけるワクフの社会・経済的な役割についての報告を行い、日本史・西洋史・アジア史の都市研究者との密度の濃い討議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の骨子であるワクフ調査台帳の基本データの解読とデータベース化作業は予定どおり進捗しており、これにもとづく学会研究発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
文書史料の解読には、現地研究者の協力が不可欠であり、また他の関連史料との比較・検討が有効である。このための、国際的な研究者のネットワークづくりを強化していきたい。
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