2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520715
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森安 孝夫 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70157931)
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Keywords | ウイグル / 中央アジア / 手紙 / マニ教 / 仏教 / シルクロード / トゥルファン / 敦煌 |
Research Abstract |
中央アジア出土文物を所蔵する世界各地の機関のうち,本年度は8月16日~9月7日に,ロンドンにある英国図書館とベルリンにあるベルリン=ブランデンブルク科学アカデミー並びにアジア美術館を訪問し,古代ウイグル語手紙文書の原文書とマニ教関係文書・絵画の調査を行なった。これによって最終目標である『シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書集成』の完成に向けて,大きく前進することができた。さらにベルリン=ブランデンブルク科学アカデミーでは折に触れてドイツ人研究者と討論を重ねただけでなく,ベルリンの中央アジア学研究者による研究会において,当該『手紙文書集成』の研究編に当たる「古ウイグル手紙文書の書式」について発表し,意見を聞くことができた。 以上のような作業を踏まえて,今年度末には,「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(前編)」と題する論文を,『大阪大学大学院文学研究科紀要』に日本語と英語の対訳で発表することができた。古ウイグル手紙文書は,9世紀から14世紀という長期にわたるものであり,その年代決定ができなければ歴史史料として有効に利用することは困難である。本論文においては,書体とキーワードから年代決定をする方法を編み出し,時代判定の基準を作りあげた。 一方,ウイグル手紙文書のうち古層の9~11世紀のものには中央アジアのマニ教徒の手になるものが多いが,13~14世紀に中国の江南地方で制作されたマニ教絵画(絹絵)には,世界で唯一マニ教を国教としたウイグル人の残したマニ教絵画との密接な関連が見られる。近年,吉田豊・京大教授と私を含むグループが日本で発見したこの種のマニ教絹絵のうちの1点について,その歴史的背景にまで踏み込んだ論文をThe Discovery of Manichaean Paintings in Japan and Their Historical Backgroundと題して英語で発表できたことも,今年度の大きな成果であった。
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Research Products
(6 results)