2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520715
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森安 孝夫 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70157931)
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Keywords | ウイグル / 中央アジア / 手紙 / マニ教 / 仏教 / シルクロード / トゥルファン / 敦煌 |
Research Abstract |
中央アジア出土文物を所蔵する世界各地の機関のうち,本年度は9月13日~10月1日に,パリにあるフランス国立図書館並びにギメ美術館を訪問し,古代ウイグル語手紙文書の原文書とマニ教関係文書・絵画の調査を行なった。昨年のロンドン・ベルリン訪問に引き続くこのパリ訪問によって,最終目標である『シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書集成』の完成に向けて,また一歩前進することができた。ただ,もう1つの目的地であったサンクトペテルブルクのロシア科学アカデミー東方文献研究所の訪問は実現しなかったので,同研究所所蔵のウイグル文書のマイクロ写真を所蔵する東京の(財)東洋文庫に2度出張して,テキストの確認を行なった。 以上のような作業を踏まえて,今年度は,「シルクロード東部出土古ウイグル手紙文書の書式(後編)」と題する論文を,森安孝夫(編)『ソグドからウイグルへ』(汲古書院)に発表し,その英訳を『大阪大学大学院文学研究科紀要』に発表することができた。本論文の前編・後編を合わせるこどによって,古ウイグル手紙文書の書式の大枠を理解し,書式・字体・宗教なとの特徴によって年代決定をして,歴史史料として活用する道が開けたと確信している。 ウイグル手紙文書のうち古層の9~11世紀のものには中央アジアのマニ教徒の手になるものが多いが,13~14世紀に中国の江南地方で制作されたマニ教絵画(絹絵)には,世界で唯一マニ教を国教としたウイグル人の残したマニ教絵画との密接な関連が見られる。近年,日本で続々と発見されるこの種のマニ教絹絵の研究を精力的に進めている吉田豊・京大教授とは密接に連絡を取り,情報の収集に努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,i)中央アジア出土古代ウイグル世俗文書の中から手紙文書を探し出すためのキーワード及び書式の発見,ii)書体・書式・キーワードから年代決定する方法を編み出し,歴史史料として活用する道を開く,(iii)全テキストの集成版の構築であったが,2年間で前二者はほぼ完成し,しかもそれを英語で発表することができた。当初は,そこまでを3年間で行うつもりであった。
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Strategy for Future Research Activity |
私の使える科研費はあと1年残っているが,その金額は60万円であり,これまでの2年間で訪問できなかったサンクトペテルブルクのロシア科学アカデミー東方文献研究所に所蔵されるウイグル文手紙文書の古文書学的調査を今夏に実施することは,不可能である.そこで,最終年度は,古代ウイグル手紙文書の全テキスト集成を完成し,翻訳が可能な分量の残るテキストについては英訳を付して,世界の中央アジア史・トルコ文献学界の共有財産として提供するという究極の目標に向かって,できるだけ多くのテキスト英訳,古文書学的情報の整理,グロッサリーと各種索引の作成準備に取り組みたい。
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Research Products
(3 results)