2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520716
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
萩原 守 神戸大学, 大学院・国際文化学研究科, 教授 (20208424)
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Keywords | モンゴル / 蒙古例 / 法制史 / 清朝 / 理藩院 |
Research Abstract |
2011年度研究実施計画としては、まず、康煕6年の蒙古例法典について、転写と訳注をパソコンに打ち込んでいくという計画を予定していた。ところが、夏にウランバートルで研究発表をした際に、乾隆・光緒期の裁判文書を比較的長期間にわたって閲覧した結果、以前研究していた光緒期の「オドセルとナワーンの事件」のその後に関する新しい公文書を何通も発見できた。2006年に刊行した筆者の専門書では、裁判開始前に逃亡した殺人犯オドセルがどうなったのかを確定することができなかったのであるが、今回、彼が10年近く逃げ回ったあげく再捕縛されたことを確定できた。そのため、この事件の結末とともに乾隆期の別の二つの事件をも同時に整理発表しておくことが可能となった。康熈6年の法典を入力するだけでなく、乾隆期の蒙古例条文適用の結果を、誰かが発表する前に整理・発表しておく必要が出てきたのである。その結果、康煕6年法典の研究と乾隆期の蒙古例条文適用研究という二つの目標ができた。 一方、2010年度末に執筆した、「崇徳3(1638)年軍律が康煕6年の蒙古例法典には入っておらず康煕35年の法典には編入されている」ことを実証した新研究を、国内外で口頭発表するというもう一つの計画は、完全に予定通り進めることができた。まず、5月20日に東京で開催された第56回国際東方学者会議で、英語とモンゴル語で発表し、ドイツや内モンゴルから来目したザガスター、チメトドルジ等の専門家と意見交換することが出来た。次いで、8月10日にはウランバートルでの第10回国際モンゴル学者会議にてモンゴル語で発表した。ドイツのホイシェルトや内モンゴルのダリジャブ、モンゴル国のバヤルサイハンら法制史の専門家と意見交換でき大成功であった。文書館でも裁判文書を多数閲覧・発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年夏にウランバートルの公文書館にて、以前研究した「オドセルとナワーンの事件」のその後に関する公文書史料を多数発見できた結果、蒙古例の文献学的研究を行うとともに、誰も発表していない今のうちに、乾隆期の蒙古例条文適用に関する新しい研究を概説書のような形でも発表しておくという二つ目の目標が生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
乾隆期以前の文献学的蒙古例条文研究を進めつつも、乾隆期の蒙古例条文適用に関する研究を先に仕上げるという方針をとりたい。筆者自身、本科研に関連して「乾隆期以前の文献学的蒙古例条文研究」、「乾隆期の蒙古例条文適用」、「清代モンゴルにおける秋審の有無」という三種類のより細かい研究テーマを現在持っているが、とりあえずその内の「乾隆期の蒙古例条文適用」の問題を先に完成させたい。その後、今年度中、できれば秋頃に「乾隆期以前の蒙古例条文研究」に復帰して研究計画を推進できると思う。
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