2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520716
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
萩原 守 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20208424)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 東洋史 / 基礎法学 |
Research Abstract |
本研究での平成24年度は、もともと崇徳3年の軍律、康煕6年の蒙古例法典、康煕35年頃の蒙古例法典という3種類のモンゴル文法典に関して各条文の和訳と比較検討を進める予定であった。しかし、平成23年度の夏期におけるウランバートルでの文書調査によって、かつて私が研究していた「オドセルとナワーンの事件」に関する新しい史料を大量に発見することができた。また、中国の内蒙古自治区から、裁判史料を含む大量の理藩院関連の史料集が出版された。以上、二点の史料が新たに出現したことによって、法典の条文研究よりも、とりあえず裁判制度の研究を優先させる必要が出てきた。先に研究しておかないと、誰か他の研究者がこのテーマを奪い取ってしまう可能性が出てきたのである。そこで、3種類の法典の比較研究と同時進行の形で、次の直近のテーマとなる裁判制度研究に向けた下準備をも進めておくことが、平成24年度の課題となった。 結果的に、3種類の法典の訳注と比較は、少しずつではあるが着実に進み、平成25年度の研究を以て一定程度の段階にて一時中断できそうなぐらいの水準までは達した。この法典研究は、数年後に本格的に再開させるつもりである。また、本科研に続く次の科研テーマとして予定している裁判制度研究への準備も、平成24年度に着実に進めることができた。その学会等での活動の結果、学術雑誌『法制史研究』から、清代モンゴルにおける裁判制度研究の論文二点に関する書評の依頼と、同じくモンゴル法制史の研究動向執筆の依頼が来た。いずれも執筆は平成25年度、掲載は平成26年度となる予定であるが、ちょうど現在の本科研テーマと次期の科研テーマとを有機的に結びつけるという意味で、大いに意義ある研究となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の理由は、平成23、24年度からの学内行政上の大量の仕事である。これによって一時は、ほとんど研究ができず、授業にも支障が出かねないような状態となってしまった。ただ、これはいつまでも続くという訳ではなく、幸い平成25年度中には終了する予定である。もう一点は、上記の研究実績の概要にも書いたように、平成23年度に自分自身が史料調査によって裁判制度研究上の重要史料を発見してしまったことと、内蒙古自治区から重要史料が新たに出版されたことである。この二種の史料が決定的な意味を持っていたために、他の研究者が研究する前に自分で先に裁判制度の問題を研究しておく必要が生じ、昨年度から、本来の目的であった法典の条文研究と同時進行で、裁判制度研究の下準備をもしておく必要が出てきたためである。この同時進行は、平成25年度で、一旦ストップさせる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めている法典研究は、平成25年度での本科研終了と同時に、一旦中断させるつもりである。そのため、25年度のみ、法典研究と裁判制度研究とを同時進行させて、両方ともある程度の水準にまで研究段階を確保しておきたいと考えている。その後、平成26年度から4年間ほど、裁判制度研究にのみ集中して、実績を上げておきたい。既に、具体的な業績の予定を3、4点、立てている。こちらの方が具体的な業績は先に出せるであろう。そして、裁判制度研究を、充分な業績が出た区切りの良い所で一旦終了させた後、再びこの法典研究に戻って来るつもりである。
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