2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国南北朝時代の墓誌銘と造像記の接点-妻子・門弟の文末記録から閨閥を追う-
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22520717
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
東 賢司 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10264318)
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Keywords | 墓誌 / 墓誌銘 / 造像記 / 門閥 / 南北朝 / 北魏 |
Research Abstract |
本年度は、陝西省、四川省での現地調査と北京での資料収集を行った。それらの資料を従来から作成しているデータベースに追加し、資料数を増加させた。北朝末期の資料を中心に整理した結果、墓誌資料は1650件、造像記資料を500件がデータ化できた。 また本年度は、石刻資料の内、女性の墓誌銘を重点的に分析した。数量は、約300件確認できた。女性の墓誌は、男性の墓誌と記述内容が異なる。男性の場合は、銘の四言詩を除く大半の部分が、本人の官職履歴を記述している。本人の公的な姿(表の顔)を見ることができるが、一方では、見識や人となりというべき部分は確認することができない。これは、表向きは官位官職という儒教的な官僚制度に縛られているが、裏では仏教を信仰し、龍門石窟に代表されるような石仏作成に寄進をしていた事実があることと共通している。 一方の女性の場合は、男性と異なり官職等の記載は少ない。また一般的にはその大きさは小型のものが多く、文章も短文のものが多い。しかし、その記述には、本人の教養を窺わせる記述や、墓主の父からさかのぼる家系、墓主の子供や孫の情報等、一族の人数を格段に広げられる大量の人物の情報を集めることができる。また、当時の埋葬では、夫妻で合葬あるいは隣接する場所に埋葬されることが多いので、埋葬場所等の情報を得られる。実際に300件の資料でも平均4名の情報を得ることができた。女性や子供の氏名等は、史書に記録されることがないために、資料的な価値が認められることがなかったが、その環境は変化してゆくと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中国各地でのフィールド調査はすべて終了し、資料の整理はおおむね終了している。また、墓誌銘を中心とする石刻資料内の妻子の記録もほぼすべてを収集できた。さらに、北朝末に活躍した人物が隋代に死亡していることが多いために、隋代の石刻資料を整理し、釈文等をデジタル化した。
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Strategy for Future Research Activity |
新資料の報告書等の最新情報を中国で収集してデータベースに加えつつ、妻子や門弟の記録から、皇帝の一族を中心とした漢族の関係構築の実情を追う。また、石刻資料から確認できる南朝と北朝の繋がりを国境周辺の郡県の一族を中心に追い、交流の実際を明らかにする。
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