2011 Fiscal Year Annual Research Report
加耶諸国各国の史的展開と諸国連合の実相に関する総括的研究
Project/Area Number |
22520718
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田中 俊明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50183067)
|
Keywords | 加耶諸国 / 大加耶連盟 / 金官国 / 比自火国 / 栄山江流域 |
Research Abstract |
研究の目的は、加耶諸国のうちの主要な国、大加耶国・多羅国・金官国・安羅国の歴史的展開を、限られた文献に加えて、地方誌の地名資料や考古資料などをもとに、できるかぎり再現すること。それを通してすでにわたしが大加耶連盟・加耶南部諸国連合と名付けている諸国連合におけるそれらの国々の位置づけをいっそう明確にし、相互の関係を動的に把握すること。また比自火国については、同様にその国自体のあとづけをするとともに、周辺の小国との関係に注意しつつ、その文化圏・政治圏を検討し、それを中心とする諸国連合の存否について検討すること。そしてそれら全体の成果をふまえて、あらためていわゆる「任那日本府」論を、批判的に検証することである。 7月に金官国・安羅国・多羅国・大加耶国・比自火国の故地を踏査し、9月には、晋州博物館において山清地域をテーマとする特別展を参観し、加耶と関わりの深い全羅道地域を踏査した。また9月には全羅南道羅州において「榮山江流域と古代日本」と題する発表をした。 また10月に公州博物館でのシンポジウムで発表した「武寧王代百済の対倭関係」をその後、修正の上発表したが、それは、加耶をめぐる百済と倭との協調関係について述べたものである。 比自火国は、当初3年目に調査を進める予定であったが、ちょうど昨年、重要な発掘調査がつづいたため若干変更して参観した。7月に、中心古墳群である校洞の7号墳の発掘調査と、その傘下にあったとみられる霊山の古墳の発掘調査を実見することができた。これは、小勢力の連合体としての比自火国について考察をする上での有効な知見となった。それを例として、諸国のありかたと、ほかの国との連合関係について、検討を進めることにしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度を終えて、順序はかわったが、対象地域の2年分の踏査はひととおり済ませ、新たな知見も多く得た。また近年の調査報告も順調に入手しており、データはそろいつつある。最終年度には、それをもとに、当初の目的に沿って考察を進めることが、ほぼできるようになってきた。あと細部にわたる調査や情報蒐集を経なければならないが、ここまでは順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記のように比自火国については、ほんらい3年目の計画であったが、発掘状況に即して2年目に参観した。そのため、3年目には不足する多羅国・大加耶国の調査を行いたい。特に大加耶国においては、中心古墳群に連接する主山城(高霊)の発掘が予定されており(すでに一部を昨年度に実施)、それを確認したい。そうした踏査をふまえ、総合的に検討することにしている。
|