2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520719
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
井上 徹 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20213168)
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Keywords | 儒教化 / ヤオ族 / 羅定 / 商税 / 郷紳 / 請負構造 |
Research Abstract |
多民族・多文化を特徴とする珠江デルタ流域は16世紀を分岐点として科挙官僚制を軸とする儒教システムによって統合される一元的な構造へと変質していった(儒教化)。本研究は、この儒教化のプロセスにおいて海外貿易の窓口、広東の行政首都であった広東省城及び周縁の州県城(とくに羅定城)がいかなる文化的役割を果たしたのかを探求することを目的とする。初年度は地方志、族譜などの史料の収集、周縁の都市(羅定市)及び旧ヤオ・チワン族居住村落の調査、『盟水斎存牘』、『撫粤政略』などの講読、中心都市(広東省城)を中心とした都市機能(海外貿易、都市行政、社会関係)を分析した。本年度は次のような作業を進めた。(1)儒教化に関する総合的考察のために、明代における非漢族(ヤオ族、チワン族など)と漢族の対立・反乱状況、反乱鎮圧後の明清両王朝の政策、非漢族の同化のプロセスに関して、考察を進めた。対象としたのは、広東広西省境地帯の広東側地域つまりヤオ族を中心とする多民族反乱の拠点であった羅傍とデルタ部との間に位置する地域である。この地域を対象として、漢族への同化(漢化=儒教化)のプロセスを総合的に検証した。(2)漢化=儒教化の前提となる漢族的な経済構造に検討を加えた。具体的には、万暦年間に広東で行われた商税徴収(?税)の仕組みの実態を検討し、中央政府から派遣された宦官による商税徴収が牙行、棍徒などの請負によって実現されていたこと、また広東の市場をめぐって地元の郷紳・商人と外省の仲買商人との間で激しい競合が展開したことを明らかにした。この作業を通じて、漢族の商業支配がデルタ地帯を中心として確立していったことが理解される。漢化=儒教化はこうした経済構造の変動と並行して進行したと推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は史料と分析、現地調査、都市機能に関する基本的作業を行ったが、本年度はそれらをもとに、非漢族と漢族との対立、漢族の優勢、漢化の状況などを具体的に分析できた。また、珠江デルタ地帯の経済構造の一端を明らかにしたことにより、広州などの都市が漢化の経済的中心であることが鮮明に浮かび上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は残る二カ年において次のように計画を推進する予定である。(1)珠江デルタの中心都市(広東省城)が漢化=儒教化のプロセスにおいて果たした文化的役割を解明する。具体的には、明清両王朝の各種装置(官庁、学校)、書院などの考察により、北方の先進的な文化が周縁地域の珠江デルタに中央権力主導で移植された態様を解明するとともに、外来の商人などが移入した文化のあり方を探る。主要史料は『盟水斎存牘』、『撫粤政略』。(2)デルタの中心都市と比較しつつ、非漢族の漢族化が進捗した羅定(旧羅傍地方)を対象として、州県城の空間構造、文化装置(学校、郷約など)を解析し、中心都市との関係を探る。使用する史料は現地調査で入手した族譜、調査資料、及び地方志などである。
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Research Products
(6 results)