2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520719
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
井上 徹 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (20213168)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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Keywords | 漢化 / 儒教化 / 羅旁 / 始祖祭祀 / 撫粤政略 |
Research Abstract |
多民族・多文化を特徴とする珠江デルタ流域は16世紀を分岐点として科挙官僚制を軸とする儒教システムによって統合される一元的な構造へと変質していった(儒教化)。本研究は、この儒教化のプロセスにおいて海外貿易の窓口、広東の行政首都であった広東省城及び周縁の州県城(とくに羅定城)がいかなる文化的役割を果たしたのかを探求することを目的とする。本年度は次のような作業を進めた。(1)前年度に引き続き、都市史料講読会において、李士楨撰『撫粤政略』のうち、広東省城を中心とした都市行政に関わる史料を選読し、分析を加えた(計6回開催)。選読の項目は「崇修庠序」、「粤東缺官就近選補急限赴任疏」、「覆花縣建立城垣等項物料銀數疏」、「修復層楼」、「課士観風」、「諭平治嶺路」、「禁津渡勒抽」、「汰冗役」、「申明賞罰」などである。また、旧羅旁地方(現在の羅定市、雲浮市)で収集した諸姓の族譜、地方志(羅定州志、東安県志、西寧県志)を分析する作業を進めた。(2)旧羅旁地方の漢化=儒教化の進捗を考えるうえで重要な鍵を握るのは反乱鎮圧後に樹立された政治軍事システムとともに、宗族という漢族の儒教文化を導入して組織された宗族の存在である。16世紀から19世紀にかけて、旧羅旁地方では、非漢族(ヤオ族、チワン族)か漢族かを問わず、宗族の組織が普及していった。そのうち譚姓は最も早期に祠堂を中心としたシステムを樹立した宗族であり、1980年代以降、祠堂祭祀を復活させている。2012年8月30日に譚姓で挙行された始祖祭祀の儀礼を見学し、現代にも宗族の伝統が受け継がれていることを確認した。(3)中央研究院(台北)で開催された都市に関するシンポジウムにおいて、東アジアの都市形成の歴史のなかで中国都市がいかなる特徴をもっているのかを報告した。これにより、広州や羅定の都市を東アジアの都市史のなかで位置づけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去二年度において、現地調査、史料講読、及び漢化=儒教化や経済構造に関する論文の公刊などの実績を上げてきた。本年度は、都市論の見直し、羅旁地方に関する補充調査、関連史料の読解を行い、次年度に予定される最終報告の準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は次年度が最終年度であるので、報告書作成に向けて次の作業を進める。(1)珠江デルタの中心都市(広州、仏山)と対比しつつ、デルタ地帯のボーダーランドである旧羅旁地方の中心都市羅定に焦点を絞り、漢化=儒教化の拠点となる州県城(羅定州、東安県城、西寧県城)を中心とした政治軍事支配の仕組みを解明する。(2)旧羅旁地方に出現した政治軍事空間のもとでの社会空間において、どのように儒教化が進捗したかという問題を、宗族という当該地域の主要な社会集団の動向に注目して検討する。(3)研究期間の成果をとりまとめて成果報告書を刊行する。
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Research Products
(4 results)