2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22520728
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
兎内 勇津流 北海道大学, スラブ研究センター, 准教授 (50271672)
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Keywords | フィラレート(ドロズドフ) / ロシア正教会 / キリスト教史 / 宗教と国家 |
Research Abstract |
平成22年度においては、アレクサンドルー世期(1801~1825)におけるフィラレートに注目したところ、その活動はロシア正教会内部に限定されたものでなく、とりわけ1809年から1819年のペテルブルクで活動した時期は、皇帝の側近のひとりで宗務院総長(オーベル・プロクロール)やロシア聖書協会総裁を務めたアレクサンドル・ゴリーツィン公をはじめとする上層社会と広い人間関係を持ち、若くしてすでにその中で宗教者として強い影響力を持っていたこと、文学サークル・アルザマスと近い関係にあって、ロシア社会の変革を志向するその同志とも目されていたことがわかってきた。フィラレートのそうした活動は、聖書協会の活動停止(1824年)やデカブリストの乱(1825年)など、その後の情勢の変化により、アルザマス・サークルの活動ともども封印され、これまで長く忘れられてきたように思われる。 また、フィラレートの言説は、その信仰や教義理解という面からでなく、正教会内部におけるフィラレートの政治的立場が影響していることを踏まえる必要があるが、そのことを具体的に考察する手がかりを得ることができた。 フィラレートは、非常に用心深い人で、長命であったにもかかわらず、あれこれの記録を残さなかった人であるが、フランス革命やナポレオン戦争への対応をめぐって激動した当時のロシアの思想的状況と人間関係の両面を踏まえて、今後は、その著作の読み解きに入っていくことにしたい。
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Research Products
(2 results)