2011 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア・アメリカ会社の経営から見た帝政ロシアの商業ネットワーク
Project/Area Number |
22520729
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森永 貴子 立命館大学, 文学部, 准教授 (00466434)
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Keywords | ロシア / アラスカ / 露米会社 / 商人 / 世界経済史 |
Research Abstract |
本年度は「ロシア・アメリカ会社(RAK)」文書を所蔵するモスクワの「ロシア帝国外務文書館(AVPRI)」での作業を中心に行った。これによりいくつかの文書史料を閲覧・筆写することができた。しかし同文書館は史料提供・閲覧までに時間がかかり、1度の請求で5文書の調査・筆写を行うため約1週間かかる。海外出張の時間制約から、同文書館で収集できる文書数が限定されるため、刊行文献・雑誌のデータ調査を並行して行った。 雑誌資料としては、ユーラシア大陸の茶貿易などを中心に取引データを調査するため、その重要流通拠点であるニジェゴロド定期市に着目した。その具体的データを整理するため、モスクワの図書館では『マニュファクチュア・貿易省ジャーナル』『内務省ジャーナル』など政府刊行雑誌の調査を進めた。これらは1820年代から60年代までの長期的データを含むため、23年度だけではなく、24年度も引き続き調査を行う予定である。以上の雑誌には茶貿易を含めてRAKが関わった取引についてのデータが記録されていることから、これらを整理することでユーラシアの流通の大まかな全体像を描くことができると予測している。 本年度は以上の調査継続に集中したが、その成果発表の数は限られたものとなった。これは調査継続中のデータが多く、公表するに充分な史料数に至っていないためである。しかし、これまでの収集データを基に今後どのような研究の可能性があるかについて、論文1本、国際シンポジウムにおける報告1本を公表した。いずれもユーラシア大陸と北太平洋貿易に関する研究成果である。また平成23年3月に行われたシンポジウムで、外国人研究者による「ロシアのアメリカ観」に関する報告が行われたが、研究者はこれにロシア・アメリカ会社とアラスカの経営実態に基づくコメントを行い、平成24年4月にシンポジウム論集として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで研究史料を収集するための重要拠点の一つであるロシア帝国外交文書館(AVPRI、モスクワ)での調査を行ってきたが、申請史料の提供・閲覧までに多大な時間を要し(5つの文書閲覧までに約1週間)、海外出張の時間的制約からまとまった数の史料をすぐに調査することが困難である。加えて平成24年度より同文書館は改装修理のため閉館が決定している。このため、本年度同文書館での調査は当初予測したよりも遅れており、平成24年以降は他の文書館調査へと計画を変更せざるをえなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、RAK(ロシア・アメリカ会社)史料を所蔵する別の公文書館(RGADA:ロシア古代文書館、モスクワ)での調査に切り替える。また、北海道大学スラブ研究センター史料室に、National Library(ワシントン)のロシア・アメリカ会社コレクションがマイクロフィルムで所蔵されており、この史料を重点的に収集することも視野に入れる。公文書史料の収集は時間的に制約されるため、ロシアの図書館を中心に政府刊行雑誌のデータ収集も行う予定である。また、データ収集の成果を基に、本年度中にRAKの歴史概説書として小冊子刊行を計画している。
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Research Products
(4 results)