2011 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国ノースカロライナ州ダーラム市の黒人コミュニティに関する研究
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22520737
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐々木 孝弘 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (10225873)
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Keywords | 西洋史 / 家族 / 人種 / コミュニティ |
Research Abstract |
今年度は、まず昨年度収集した703家族のアフリカ系アメリカ人の家族データを拡充することから調査をスタートした。8月8日から9月27日までの渡米調査期間のうち、8月12日から9月22日までの約40日間をこの科研のための調査期間に当てて、昨年度収集することができなかったこの地区最大のアフリカ系アメリカ人居住地区であるヘイタイの家族データ(548家族)を追加した。これによって、この研究で扱う分析対象地区のアフリカ系アメリカ人は、全部で1,261家族、4,088人、白人については306家族、1,251人となった。 この収集したデータについて、アフリカ系アメリカ人のデータを白人のものと対照比較することによって、1900年の段階でのアフリカ系アメリカ人の家族構成の特徴を分析した。さらに、このふたつのグループの間に見られる違いを解釈するために、ノースカロライナ大学およびデューク大学に残されているオーラル・ヒストリーの史料を聞き、移住に伴う家族とコミュニティの役割についての具体的な事例を収集した。 これらの調査と分析から得られた知見は、「外に向かって開かれた家族とコミュニティ-1900年、ノースキャロライナ州ダーラム市のアフリカ系アメリカ人たち-」と題する論文にまとめて、樋口映美編著『流動する〈黒人〉コミュニティ-アメリカ史を問う-』(彩流社)の第2章として2012年2月に公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アフリカ系アメリカ人の家族のデータ収集に当初の計画よりも時間を要したが、これはセンサスデータの煩雑さがもたらした止むを得ない遅れであると認識している。白人のデータとの比較分析をもとにしてひとつの論文を発表できたことは大きい。前半の2年間で、本科学研究費補助金申請の理由となった疑問に対して一応の解答を見出し、それを論文の形で発表することができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年3月までの研究期間の前半で、1900年にダーラム市に住んでいたアフリカ系アメリカ人と白人の家族に関する基礎的なデータの収集が完了した。今後は、人名録、オーラル史料、訴訟の記録などを駆使して、この地域に作られたコミュニティのあり方の特徴をより立体的に把握する研究を推進していきたい。以下の3点の解明を重視しながら研究を展開する。 (1)働いていた人たちの雇用と居住について(白人との比較) (2)人種差別に対抗する機能を果たしたコミュニティのあり方 (3)人種差別から比較的に自由に生きていた子どもたちのつくる世界
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