2012 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国ノースカロライナ州ダーラム市の黒人コミュニティに関する研究
Project/Area Number |
22520737
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐々木 孝弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (10225873)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 西洋史 / 家族 / 人種 / コミュニティ |
Research Abstract |
昨年度までに収集したデータをもとに、今年度はダーラム市に居住していたアフリカ系アメリカ人の具体的な生活環境を考察するために、ノースカロライナ大学図書館に所蔵されているオーラル史料"The Hayti Spectrum: Documenting Negro Life of the 1920s, '30s, and '40s in Durham, N.C."を調査した。これは"Hayti"地区に住んでいた46人分のインタビュー聞き取り調査を120本余りのカセットテープに収めたものであるが、7月26日から9月5日まで現地を訪れてこのコレクションを調査した。 この問題を整理し考察する過程で、黒人奴隷制度のあった時代に白人所有者の家庭の中で働いていた家内奴隷の環境と解放後自由な労働者として白人家庭の中で働いた家事労働者の環境との間の相違は何か、さらに20世紀になって「住み込み」から「通い」へと労働の環境が変化することによってどんな変化が生じてきたのかという問題を詳細に検討する必要があることが明らかになった。4月から12月までこの問題を掘り下げて考察し、6月と10月に2度共立女子大学と北海学園大学で開かれた研究会において試論を口頭発表し、アメリカ合衆国南部を対象とした歴史研究者と意見を交換した。これは近い将来に(2013年度中に)論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサスのデータを使ったアフリカ系アメリカ人家族と白人家族の比較は完了し、オーラル史料をもとにダーラム市のアフリカ系アメリカ人の生活に家事労働が果たした役割が大きかったことを確認することもできた。また、今年度はとくに奴隷制度時代と解放後の労働を取り巻く環境の変化についての考察を進めることができた。他方において、当初計画していた調査課題の中でまだ手をつけていない問題として、ダーラム市へ移住してきた人たちの移住後の定住のしかたの特徴を考察するという課題が残されている。2013年度はこの課題に集中して取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度に残された課題は、上で説明したように、ダーラム市へ移住してきた人たちの定住のしかたを考察することである。これを主として居住の面から考えてみたい。史料として、ダーラム市の人名録の記載データを用いる。家族データを比較する際に設定した調査対象地域に1900年に居住していた人たちがたとえば1920年にどの程度残っていたのか、またその間の20年間にダーラム市内で住所の移動があったのかなかったのかなどを調査して、この問題についての一応の結論を出したい。
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